ペットを飼うと認知機能の老化にどのような影響があるのか 研究

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 高齢者の認知機能低下は、公衆衛生上の大きな問題だ。これまで他者との頻繁な交流や良好な人間関係が、認知症のリスクを低下させることが示されてきたが、最近の研究で、ペットがその役割を果たす可能性があることがわかってきた。

◆孤独を癒すペット 認知機能にも影響
 厚生労働科学特別研究事業の報告によれば、日本では、65歳以上の約16%が認知症であると推計されている。米ABCニュースによれば、アメリカでも65歳以上の成人のほぼ10%が認知症、32%がある程度の認知機能障害を抱えているとされ、高齢化と単身世帯の増加で、今後ますます社会問題化するとみられている。

 認知症予防には他者との交流が重要とされてきたが、イギリスでの大規模な研究で、人だけでなくペットと暮らすことでも、加齢に伴う認知能力の低下を遅らせることができるとわかった。この研究では、イギリスに住む50歳以上の成人7945人を対象に、ペットを飼っている人と飼っていない人の認知能力の低下率を9年間にわたって比較。その結果、1人暮らしの高齢者では、ペットを飼うことが認知能力の低下速度を遅らせることがわかった。

 1人暮らしの孤独感や孤立感は、ペットを飼うことで軽減できることがこれまでも示されてきたが、実際にペットを飼っている人と飼っていない人の認知機能の低下率を直接比較した研究はなかったという。テンプル大学神経学助教授のリア・クロール氏は、他人と頻繁に交流できない社会的状況にある人にとって、ペットが新たな選択肢になる可能性があるとしている。

Text by 山川 真智子