シンガポール、10年の車所有権が1600万円に高騰 アパートより高価に

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◆中流階級には夢のまた夢
 シンガポールで車を運転する人が減少した2020年には、COEの価格は約3万シンガポールドルまで下落した。コロナ禍後の経済活動の活発化によって車の購入が増えた一方で、道路を走行する車の総数は約95万台に制限されている。新しいCOEの発行数は、古い車両の登録解除数によって決まる。(ロイター)

 10年が経過すると、自動車所有者はCOEの登録解除または更新を選択し、更新する場合は車種区分に応じたPQPと呼ばれる過去3ヶ月間のCOEの平均価格を支払うことになる(インデペンデント紙、10/5)。

 シンガポールは比較的小さな国であるにもかかわらず、大富豪の数は世界有数。価格高騰によって中流階級の人々の大半にとって自動車は手の届かないものになっている。社会学者タン・アーン・セールが言う「シンガポール・ドリーム」(ロイター)、つまり現金とマンションと自動車を手に入れるという上昇志向の社会的流動性に、価格高騰は水を差すことになる。シンガポールの世帯年収の中央値は12万1188シンガポールドル(約1320万円)だ。インフレが続き、景気が低迷するなか、COE価格が安かった頃に購入した車を売って利益を得ようとする人もいるという。

Text by 中沢弘子