脅かされるブラジル先住民保護区、無事に伝統の成人式

Eraldo Peres / AP Photo

 6月のある日の朝から夕暮れにかけて、両親が見守るなかをブラジル先住民の若者たちが藁葺き屋根の小屋の下で輪になって踊っていた。その場には、アマゾン熱帯雨林に自生する樹木の木材を混ぜたタバコを吸う大人たちもいた。

 6日間にわたって延々と行進が続く人の列が過ぎ去ると、腫れた足に包帯を巻いているテンベ族、ティンビラ族の若者たちが残された。食事は質素で、夜は小屋に吊るされたハンモックで寝る。これらはすべて、アルト・リオ・グアマ先住民保護区で行われている「ワイラワー(Wyra’whaw)」と呼ばれる重要な通過儀礼なのだ。

 少女たちはこの1年の間に初潮を迎え、少年たちは声変わりしつつある。儀式の最終日にはテコ・ホー村から晴れて大人の仲間入りが認められ、不確かな未来へ向けてコミュニティを導く役割を担うことが期待される。

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 この地区に住むテンベ族のリーダー、セルジオ・ムティ・テンベ氏は「ブラジルには、自分たちの文化や伝統、言語を失った民族(先住民)集団がいる。気がかりなのはそのことだ」と語る。ブラジル・アマゾンの先住民は、テンベなど自分が属する民族名を苗字にする習わしがある。

 近年、先住民文化に対する脅威が増している。アルト・リオ・グアマ保護区は、アマゾン北東部にある保護林に囲まれた28万ヘクタールの三角地帯で、周囲の木々は伐採がかなり進み、集落にはテンベ、ティンビラ、カヤポ族の先住民約2500人が暮らしている。

 だが、1600人もの非先住民が入植するようになった。何十年もその地にとどまっている入植者もおり、パラー州の検察当局によると、入植者の多くは樹木の伐採や大麻の栽培をしている。

 現地の先住民はすでに見回り活動を行い、自分たちの力で部外者を追い出そうとしている。しかし、それだけのことをする力と権限が限られているため外部に援助も求めている。州・連邦当局は今年5月、侵入者を追い返す計画を実行に移した。ヤノマミ族の居住地区に不法侵入した金採掘者が追放されたところだが、ルラ大統領政権下では初めて土地収奪者の追放に向けた取り組みが行われた。

 本計画に関する検察の説明によると、当局は退去の要請に応じない入植者を強制的に追放すると圧力をかけており、保護区に通じる道路や違法な建造物を認めないと公言している。6月12日時点で9割の入植者が自発的に退去したが、降雨による道路の損傷で残り1割の退去に遅れが出ているとブラジル大統領府の事務局は説明した。

 計画の運営を担うニルトン・トゥビーノ氏は「すべての立ち退きを完了させたい」と述べている。

 テンベ氏は「政府はいいタイミングで動いてくれた、我々の土地と習俗が将来も守られることを期待したい」と話している。

 儀式の2日目から最終日にかけて、母親たちが子供の身体にゲニパップの果汁を塗っていた。数時間もすると少女の肌は頭からつま先まで真っ黒に染められた。少年の身体には模様が施され、顔の下半分には顎鬚のように見える逆三角形の黒塗りがなされた。

Eraldo Peres / AP Photo

 若者たちには翌朝、何枚かの羽がぶら下がった白いヘッドバンドが贈られた。彼らは男女一組になってそれぞれ腕を組み、輪の中心に集まった村人たちを囲みながら裸足でスキップしている。そうして彼らは大人になっていくのだ。

By LUCAS DUMPHREYS and DAVID BILLER Associated Press
Translated by Conyac

Text by AP