アメリカの「アサルト・ウェポン」禁止法の行方は 年々増加する銃乱射事件

米バージニア州の販売店に陳列された銃器(2020年8月)|hristianthiel.net / Shutterstock.com

 アメリカで銃犯罪が止まらない。銃暴力統計サイト『ガン・バイオレンス・アーカイブ』によると、4月19日現在、今年だけですでに165件の銃乱射事件が発生。自殺も含めた全体で1万2596人、殺人事件だけで5402人が死亡しており、すでに2018年全体の死者数1万4943人に迫る勢いだ。

◆南部保守州で多発する銃乱射事件
 なかでも特に銃犯罪の発生件数が多いのが、銃購入や所持に関する法律が緩い南部の保守州だ。最近では4月10日、南部ケンタッキー州ルイビルで銃乱射により5人が死亡した事件や、4月9日に南部フロリダ州オーランドで発生し3人が死亡した事件、そして3月27日と29日に南部テネシー州ナッシュビルとメンフィスで発生し、それぞれ6人(容疑者を含むと7人)と2人が死亡した事件が記憶に新しい。そして多くの事件で、大量殺人を容易にする「アサルト・ウェポン(攻撃用銃器)」が使用されているのが特徴だ。

 アメリカではいつでもアサルト・ウェポンが合法だったわけではない。建国時はこのような高性能銃は存在しておらず、建国の父たちもまさか現在のような状況を想像していなかったに違いない。

 米公共ラジオ(NPR)によると、近年ではビル・クリントン元大統領時代の1994年に、カリフォルニア州選出のダイアン・フェインスタイン上院議員が提案した軍隊式アサルト・ウェポン禁止の法律が施行された。元サンフランシスコ市長で、当時まだ上院議員として1期目だったフェインスタイン上院議員は、同州ストックトンの小学校で1989年に発生し、アジア系移民の子供が多数死傷した銃乱射事件に強い影響を受けていたという。

 しかしこの法律はその10年後、ブッシュ(子)大統領時代に期限が切れ無効となったまま復活することはなく、以来アサルト・ウェポンが再び合法化した。この法律が今も有効であれば、度重なる銃乱射事件でアサルト・ウェポンが使われることもなく、救われた命も多くあっただろう。

Text by 川島 実佳