ゼロコロナ政策緩和でない、中国で感染爆発が起きている理由

満床のため受け入れを断られた患者(河北省涿州市、12月21日)|Dake Kang / AP Photo

◆把握しきれない感染者数と死者数
 SNS投稿や現地の人の話を聞くと感染拡大の深刻さを感じられるが、公式統計では一見減少しているようにみえる。政府がPCR検査義務を廃止し、追跡アプリの運用を停止したので、検査数自体が減ったからだ。実際、中国の保健当局も、公式の統計数は現実を反映していないと認めている。

 実際の感染者数の把握は事実上不可能な状況だ。人々はセルフチェックで感染検査をしているが、その結果を当局に知らせることはほとんどないからだ。

 新型コロナ死者数などの中国当局の発表は実態を反映していない可能性が高い。ネット上には火葬場や遺体安置所の様子が流れており、ラジオ・フリー・アジア(12/22)によると、24時間稼働している北京の葬儀場でも1ヶ月待ちの状態という。しかし、公式には政策を緩和して以来21日までの死者数は7人とされている。なぜなら、中国当局は新型コロナに関連する呼吸不全が直接の死因である人のみを新型コロナの死者と数えることにしたからだ(フィガロ紙、12/22)。

◆ゼロコロナ政策では抑えきれなかった感染急拡大
 では、今になって火のように感染が広がっているのは、ゼロコロナ政策をやめたせいなのだろうか? 「いや、そうではない」というのが世界保健機関(WHO)の見解だ。

 WHOのマイケル・ライアンは14日、ゼロコロナ政策を緩和する前から中国では感染拡大が始まっていたと指摘した(20minutes紙、12/15)。つまり、ゼロコロナ政策自体がすでに有効ではなくなっていた可能性がある。

 それではなぜ今になってここまで感染が爆発的に増えているのか?

 理由は複数あるだろうが、一つには、鎖国と封じ込めを繰り返してきた中国では、オミクロン以前の新型コロナウイルスへの免疫がほぼ皆無ということがある。しかも、ワクチン接種も西側諸国と比べてそれほど進んでいない。

Text by 冠ゆき