アメリカに負けたイランでなぜ喜びの声が上がったのか サッカーW杯

対イングランド戦の前にプラカードを掲げるイランサポーター(11月21日)|Alessandra Tarantino / AP Photo

11月29日に行われたサッカーワールドカップカタール大会のイラン対アメリカ戦はアメリカが勝利し、イランのグループリーグ敗退が決まった。イランは長く緊張関係にあるアメリカに負け、国民は荒れるのではと思われたが、テヘランでは逆に喜びの声を上げ歌い踊る人々の様子が多く見られた。それはなぜか。

◆9月半ばから続く抗議運動
イランでは、9月16日のマーサ・アミニの死以来、イスラム体制への抗議運動と当局による弾圧が続いている。マーサ・アミニは22歳の女性で、ヒジャブを正しく着用していなかったという理由で道徳警察の暴行を受け亡くなった。

抗議運動は「ウーマン・ライフ・フリーダム」を合言葉にし、デモのほか、ヒジャブを脱いで町を歩いたり、モラー(宗教的指導者)が被るターバンを頭から落としたりして、その抗議姿勢を示すものだ。性別を問わずイラン国内に広がっており、特に若い世代は活発に運動している。これに対し、当局は苛烈な弾圧をかけている。抗議運動が始まってすでに1万8000人以上が逮捕され、ノルウェー拠点の人権団体イラン・ヒューマン・ライツ(IHR)によれば、504人以上が処刑されたとされる。

Text by 冠ゆき