なぜ『ひまわり』を攻撃したのか? 「エコ活動」団体の主張とは

Just Stop Oil via AP

◆賛同よりも、行動か
 ナショナル・ギャラリーは、この一件についてとくに動じることはなく、ツイッター上で声明を発表した。額縁が少々ダメージを受けたが、絵画は無事だったとのことだ。

 一方、さまざまな驚きや怒りといったリアクションや報道を受けて、ジャスト・ストップ・オイルは、この行動についてQ&Aを公表。団体はゴッホの『ひまわり』がガラスで保護されていることを知った上で、今回の犯行に及んだ理由について、挑発し、挑戦し、衝撃を与えるようなことが必要であったという意図を述べる。芸術そのものを破壊することが目的ではなく、象徴的かつ衝撃的な「破壊」行動によって、人々の怒りを買い、同時に、環境破壊によって、人間がそうした芸術的創造性を可能にする条件が壊されているという矛盾を指摘したいという意図があると団体は説明する。また、メディアにもっと取り上げてもらうために、道路を塞ぐなどといった地道なプロテスト以上の衝撃的なアクションが必要であったと説明している。団体のプレス担当者は、ガーディアンの取材において、本来なら支持していたかもしれない人を阻害するといった心配はあるかという問いに対し、「当然、心配はあるが、仲間(友達)を作ろうというのが目的ではなく、変化を起こそうとしている。残念ながら、これが、変化を起こすためのやり方だ」と述べた。

 アルジャジーラは、気候変動の影響による災害などが増えるに従って、今後、こうした過激な行動が増加する可能性がある一方、こうした「エコ・テロリズム」の効果は低く、むしろ右翼に逆手に取られるといった逆効果につながる可能性があるという専門家の見解を伝える。5月にはパリのルーブル美術館のモナリザにケーキが投げつけられるという事件も起こった。
 
 ジャスト・ストップ・オイルの活動は、英国だけでなく欧州各地、北米、オーストラリアにも広がっているようだ。具体的な活動メンバー数は不明だが、そのツイッターフォロワー数は5.4万。波紋を呼ぶ過激派の行動だが、今度、無視できないものなる可能性がありそうだ。

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Text by MAKI NAKATA