生涯賃金減少も コロナによる学習遅れ、影響甚大
◆将来の収入減も? 世界経済にも悪影響
学校閉鎖は、子供や若者の生涯賃金にも影響を与えるとされる。世界銀行のワーキングペーパーによれば、パンデミックの学校閉鎖の影響を受けたクウェートの若者の場合、将来3.4~6%の収入の減少が予測されているという。研究者たちは経済開発協力機構(OECD)の成人のスキルを評価する国際成人力調査(PIAAC)のデータを用いて、1年間の学習損失は国によって4.6~16.7%、すべてのPIAAC調査のデータをまとめると7.7%の個人所得の喪失につながるとした。(世界銀行ブログ)
別の研究では、現在の学生が社会人になると、366~1776ドル(約5万〜24万円)の年収の減少に直面するとされている。世界銀行の教育担当グローバル・ディレクター、ハイメ・サアベドラ氏は、コロナ危機は世界中の教育システムを停止させたと指摘。学習の貧困の潜在的増加は、この世代の子供、若者、その家族、そして世界経済にとっての将来的生産性、収益、幸福に破壊的打撃を与えるかもしれないとしている。(同)
◆あの国は勝ち組? 子供への影響見られず
一方学術誌International Journal of Educational Researchに発表された研究で、アメリカなど子供の学習に大きな影響があった国とは対照的に、学校を閉鎖しなかったスウェーデンの子供たちは、重大な学習損失を被ることはなかったと報告されている。研究では小学1~3年の児童9万7073人の読解力評価データを分析。パンデミック中もその前と比較して語彙力・読解力スコアは低下しなかったこと、社会経済状況に恵まれない生徒がとくに影響を受けなかったこと、読解力の弱い子の割合がパンデミック中増えなかったことなどから、学校を閉鎖しなかったことは子供たちに恩恵を与えたと結論づけた。
スウェーデンはパンデミックの初期に緩い対策を取ったことで非難されたが、保守系雑誌ナショナル・レビューは、アメリカの子供たちが学校閉鎖の犠牲になったことが広く知られるようになったいま、スウェーデンのやり方はますます賢明だったように思われると述べる。期待はできないと言いつつも、アメリカの公衆衛生を担当する官僚が自己反省できるなら、スウェーデンの経験から学ぶことができるとしている。
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