生涯賃金減少も コロナによる学習遅れ、影響甚大

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 新型コロナウイルスのパンデミックにより世界各地で学校が長期的に閉鎖され、子供の学習の遅れが報告されている。学習上の損失は、この世代の子供や若者の将来の経済的損失にもつながるとされる。

◆閉鎖で実質学習なし 教育格差も露呈
 ユネスコとユニセフによる最新の調査によれば、2020年のパンデミックの最初のピーク時で、アジア太平洋地域では7億6000万人の子供たちが教育へのアクセスを断たれた。タイでは教育制度から脱落した6万4000人の生徒を探し出すことに成功したが、そのうちの約8000人はまだ復帰できていない(タイ公共放送英語版サイト、タイPBSワールド)。

 アメリカでも2020年の感染拡大時に5000万人の生徒が学校閉鎖を経験した。授業がオンラインに切り替わったが、エドウィーク調査センターが教員を対象に行った全国調査では、この年の春学期を「実質的な自主欠席」で終えた生徒は全体の4分の1に及んだと報告されている。翌年になっても、オンライン授業は多くの場合休校を意味した。夏休みに入る前の5、6月の時点で、一般の公立学校の生徒は、対面、オンライン、電話による授業もなく、登校日の65日間、つまり1年のうち3分の1以上を教育を受けず過ごしたことになる。(アトランティック誌

 アメリカ政府の関係者によれば、パンデミックの影響でアメリカの学生の読解と数学の学習には、平均して2~4ヶ月の遅れが出ているという。バイデン政権はこの問題に対応するため、予算をつけて指導者を25万人増員すると発表している。一方で、裕福で私立校に通っている子供たちは対面学習の機会が豊富にあり、学習の遅れも問題化しておらず、教育格差が指摘されている。

Text by 山川 真智子