欧米で自作銃「ゴーストガン」の犯罪増加 抜け穴多く取り締まり困難

自作ライフル銃(2017年8月)|Jae C. Hong / AP Photo

◆3Dプリンターで簡単に テロリストの使用を懸念
 銃規制がアメリカよりはるかに厳しい欧州でも、手製の銃の脅威が高まっている。ほとんどの国では銃を保持するには許可証と適正検査が必要で、それに加え妥当な理由を提示できる場合しか銃の保持は認められない。遡ると欧州では、戦争中反乱軍などが最後の手段として自作の武器を使ってきた歴史があるが、一般人が家庭で作るにはハードルが高かった。しかし、3Dプリンターがすべてを変えた。3Dプリンターは産業や研究用に使われていたが、2000年代初頭から2010年代にかけて、3D技術のコストが低下。生産規模が拡大し、3Dプリントの爆発的普及につながった。(ユーロニュース

 結果的に現在ではオンラインで入手できる設計図を用いて、誰でも自宅で自作の銃を作ることが可能になった。とくに極右の過激派などにはこうした銃は魅力的で、2019年にはドイツでネオナチが手製の3D銃でシナゴーグ(ユダヤ教礼拝堂)を襲撃し、通りがかりの人を死傷させる事件が起こっている。その後もイギリスやスペインで同様の銃を製造・所持していた者が逮捕され、極右との関連も判明している。(同)

◆抜け穴多く追跡ほぼ不可能 厳しい規制導入へ
 手製の銃の問題点は、既製の銃と違って製造番号やその他の識別マークがないため、追跡が困難だということだ。米アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局(ATF)が今年初めに手製の銃やゴースト・ガンの追跡を試みたが、約2万4000回のうち151回しか成功しなかったという。(ジョンズ・ホプキンズ大学ニュースサイト『ハブ』)

 ゴースト・ガンは完成品ではなくキットとして販売されるため、年齢や前科などのために銃器を入手できない人にとって、入手しやすく魅力的だという。また、キットである以上買うだけでは罪に問われない。こうした抜け穴を埋めようと、銃製造者に未完成の部品にも製造番号の登録を求めることや、銃製造業者として認可を受けていない者のキット販売の停止など、より厳しい規制が州や連邦レベルで導入されつつある。(同)

 しかしキットを利用しない3Dプリント銃に関しては、規制は困難だとハブは指摘する。ライデン大学のヤニック・ヴェイユ・ルパージュ准教授は、ソーシャルメディア上での3Dプリントを利用した武器製造法の共有を利用規約違反とすること、また貨幣の複製防止に使われている技術を3Dプリント武器の設計図にも適用することなどが、拡散防止に役立つのではないかとしている(ユーロニュース)。

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Text by 山川 真智子