欧米で自作銃「ゴーストガン」の犯罪増加 抜け穴多く取り締まり困難

自作ライフル銃(2017年8月)|Jae C. Hong / AP Photo

 安倍元首相が演説中に銃撃され死亡した事件で、犯人が手製の銃を使っていたことが大きく報じられた。実は近年、部品やキットを買って組み立てたり3Dプリンターを使用したりして作る、より精巧な銃による犯罪が先進国で増加している。既製の銃と違って登録されず使用されるため取り締まりが非常に難しく、当局の頭を悩ませている。

◆買った部品を組み立てるだけ アメリカで広がる手製銃
 安倍元首相を撃った犯人が使用していたのは銃の柄の部分と黒い絶縁テープで覆われた2本のパイプのようなものを持つ装置で、金属や木などの材料で作られていた。非営利のメディア研究組織ポインター・インスティテュートのアル・トンプキンス氏は、犯人が使った銃はジップガンと呼ばれる粗悪品で通常は信頼性が低く、芝刈り機や自動車の部品で作ったゴーカートのようなものだと述べる。1950年代のアメリカでも、若者たちが古い車のアンテナやドアのボルトなどを使って小口径のジップガンを作っていたという。

 しかし同氏がいま恐れるのは、「ゴースト・ガン」と呼ばれ、オンラインなどで売られている銃作成キットを使った自作銃だ。ニューヨーク州のメディア、シティアンドステイトによれば、普及率が憂慮すべきレベルまで高まっており、今年の5月11日時点でニューヨーク市警が153丁を押収。同市警が初めてゴースト・ガンを押収した2018年に比べ、314%の増加となっている。

Text by 山川 真智子