米デンバー近郊で10代による銃撃 銃暴力への関心高まる

Philip B. Poston / Sentinel Colorado via AP

 ある穏やかな日の昼下がり、コロラド州デンバー郊外に位置するオーロラ市の高校で、生徒たちが駐車場に集まっていた。そこへ10代の若者を大勢乗せたトラックが侵入し、銃声をとどろかせた。生徒たちは恐怖のなか逃げ惑い、3人が負傷した。

 11月19日に発生した銃撃事件に関連して訴追されている少年の1人は、「武装した友人を誘ってギャンググループのけんかに参加した」と捜査官に述べている。裁判所文書には、「これがこの町のやり方である」との理由が残されている。

 コロラド州で3番目に大きな都市であるオーロラ市では、10代の若者による事件が2週間のうちに相次いで発生。長きにわたって問題視されてきた銃犯罪とギャングについて、あらためて関心が寄せられている。同市では、黒人市民への対応をめぐって警察が捜査を受けているところだ。活動家や市当局者は、銃を容易に使用できる環境が問題の一因となっていることに触れつつ、新型コロナウイルス感染拡大もまた、10代のマイノリティの若者のメンタルヘルスに影響を及ぼすなど、事態悪化の要因を担っていると指摘する。

 近年、全米では子供や10代の若者による銃撃事件が増加の一途をたどっている。非営利団体「児童擁護基金(Children’s Defense Fund)」が発表した3月の報告書によると、子供と10代の若者の銃による死者数は、過去19年間で最多となった2017年以降さらに増加し続けているという。そして、この年齢層の黒人が射殺されるリスクは、白人よりも4倍以上高いことが示されている。

 デンバーにおける物価がここ数年間で高騰していることをうけ、黒人やラテン系の家族、また世界各地からの移民がオーロラ市で多く見られるようになった。約37万9000人の人口を抱える同市で若者や家族を支援する活動を行っているマイシャ・フィールズ氏は、「このような有色人種の家族は、健康面だけでなく経済的にも新型コロナウイルス感染拡大による打撃を大きく受けており、メンタルヘルスの問題を引き起こしている」と指摘する。

 11月19日、ヒンクリー高校の駐車場にトラックで乗り付けた少年たちは口論を始め、その後銃撃事件へと発展した。警察の発表によると、最初に数発が発砲されるとトラックは走り去ったものの、少なくとも10代の若者の2人が、窓から銃を向けていたという。生徒たちは恐怖のなかで逃げ惑っていた。ギャンググループのけんかについて捜査官に証言した少年を含め、16歳の若者3人が訴追された。

 銃規制の推進団体「ブレイディ(Brady)」の副代表を務めるフィールズ氏は「武装の必要を訴える10代の若者の考え方には、背筋が凍りつくような思いを抱く」と話す。思い出されるのは、2005年に弟のジャバッド・マーシャル・フィールズ氏と婚約者のヴィヴィアン・ウォルフ氏がオーロラ市で射殺されたことである。コンサート会場で友人を射殺した被告人の男に、不利な証言をするための準備をしているところだった。

 暴力防止を専門とする非営利団体「愛のために闘う基金(Struggle of Love Foundation)」で10代の若者を支援するジェイソン・マクブライド氏とオーロラ市議会議員のアンジェラ・ローソン氏は、写真共有アプリのスナップチャットで、銃の販売を宣伝している投稿を10代の若者に見せてもらったことがあるという。

 マクブライド氏は、ギャングは問題の大部分について責任を負うべきであると考えている。昨今のクリップスやブラッズのような組織立ったギャングばかりではなく、地域的なつながりはなくてもソーシャルメディア上で対立するような、小規模で連帯感のゆるい10代の若者によるグループにも同様のことがいえる。

 同氏によると、3Dプリンターを使って、もしくはインターネットで購入した部品を組み立てることで、追跡不可能な銃を自分で製作する人もいるという。

 身近な人が射殺される様子を目撃したことによる心の傷は世代を超えて引き継がれ、日常に深く根を下ろす。そして学校に寄り付かず、家庭での問題から逃避することで精神的に参ってしまう10代の若者もいるという。

 マクブライド氏はさらに、「洋服が汚れるから、けんかに巻き込まれたら銃を使う」と話していた16歳の少年について言及し、「それがいまの子供たちの考えていることなのです」と話す。

 カイラ・アームストロング・ロメロ氏によれば、10代の若者による銃撃事件はオーロラでは真新しいことではないが、学校の敷地内や近くでの事件はめったにないという。市の教育委員長には、新たな委員長が就任したばかりだ。学校に近い場所での銃撃事件が注目されることで、10代による銃犯罪を防止するための取り組みへ関心が高まることを望む。このような活動は資金不足に陥っていることが多いという。

 ソーシャルメディア上での対立や、2020年にステイホームを強いられた生徒たちへの影響が結果的に暴力を生み出していることに、市議会議員のローソン氏は同意を示す。一方で、銃撃事件の要因のなかでギャングが関わるケースはほんの一部にすぎないと考える。

 オーロラ市は、独自の取り組みとしてギャング対策プログラムを実施していた。信号無視を特定するカメラに捉えられたドライバーが納める反則金を資金源としていたものの、2018年に有権者によってカメラが撤去されて以降、プログラムも打ち切りとなった。2021年4月、市は増加したマリファナの販売税を資金源に、若者を対象とした暴力抑制プログラムを新たに開始した。しかし、予定の採用枠6名のうち確保できたのは、ソーシャルワーカー1名を含めた3名のみである。

 市の広報担当者ライアン・ルビー氏によると、110万ドルの予算を投じ、残っている枠の採用活動を行っているという。予算の一部を使って、コミュニティ主体の取り組みを支援する予定であると表明した。

 市内在住の10代の若者には居場所も必要だ。ローソン氏は、「組織的な活動への参加やメンタルヘルスの相談、誰かとおしゃべりができるような場所として、市内のレクリエーション施設が使用できるかもしれない」と提案する。それでも、暴力を食い止めるには両親や警察、そして広く地域社会からの支援が欠かせない。

 同氏は「全員が総力を挙げることです」と話す。

By COLLEEN SLEVIN Associated Press
Translated by Mana Ishizuki

Text by AP