3Dプリンター銃の製造方法のネット公開、複数の州が阻止に動く

AP Photo / Eric Gay

 シアトルの連邦地裁判事は21日、3Dプリンターによる銃製造方法のネット公開をテキサス州の団体に認めた措置の審理をめぐって、本件のように追跡不可能なプラスチック銃に関する全般的問題は、大統領もしくは議会が判断すべきだと語った。

 ロバート・ラズニック連邦地裁判事は、この団体とトランプ政権との間で交わされた措置に関する法的な論争について、27日までに判断を下すとした。しかしその一方で、「このように大きな問題の解決策を決定するのは、行政府もしくは立法府の方がふさわしい」とも発言した。

 19の州および首都ワシントンは、3Dプリンターによる銃製造方法のネット投稿を禁じた武器輸出法に変更を加えたことについて、議会および国防省への連絡なしにディフェンス・ディストリビューテッドという団体と「秘密裏に」取引をしたとして連邦政府を訴えた。

 オースティンを本拠地とするこの団体を率いるのは、銃所有規制に反対する「仮想アナーキスト」と自らを表現するコーディ・ウィルソン氏だ。

 ラズニック判事は7月31日、製造方法のネット公開を当面禁止する仮差し止め命令を出した。ワシントン州では、恒久的な措置を求めている。

 ワシントン州司法次官補のジェフ・ルパート氏は、ネット公開を認めた政府の決定は公共の安全を脅かすものであり、変更されるべきだと主張した。

 ノートパソコンと3Dプリンターを持っていれば、重犯罪人やテロリストでも銃を製造できてしまう。これは金属探知機にかからないため、空港、裁判所、刑務所その他多くの役所や学校を素通りできてしまう。非常に危険だとルパート氏は言う。

 ラズニック判事は、「自身がアメリカ地方裁判所の判事として手掛けた、おそらく最大案件」の司法判断を下すのにわずか数日しかなかったことに苛立ちを感じたと明らかにした。

「行政府と議会にも、この問題に真剣に向き合ってほしい」と話している。

 赤色のTシャツを着た「米国での銃規制を求める母親の会(Moms Demand Action for Gun Sense in America)」ワシントン支部のメンバー十数人が、裁判所傍聴席の半分ほどを占めた。答えは首都ワシントンにある、という考え方に賛成するとメンバーは語った。

「私たちは銃を所有する権利があります。しかしその権利の下、社会のすべての人々の安全に対しても共同責任が根底にあると信じています。また、本件は議会が責任を持つべきだと思います」と広報担当のスー・ホワイトコーム氏は語った。

 国務省が輸出可能な武器のリストに変更を加え、3Dプリンター銃製造方法のネット公開やディフェンス・ディストリビューテッドとの取引に道を開けば、国民の安全を危うくすることになるとルパート氏は裁判で証言した。
 
 ルパート氏によると、2013年に銃製造方法が初めてネット公開されたとき、国家安全への脅威になると主張して連邦政府は製法の公開に難色を示したという。その後、政府は3Dプリンターによる銃製造規制を緩和した。

 司法省の弁護士であるスティーブン・マイヤーズ氏は、プラスチック銃の保有は現時点ですでに違法であり、政府は法の執行に十分取り組んでいると述べて反論した。マイヤーズ氏は、各州は筋違いの法律を問題にしており、差し止め命令は撤回されるべきだと証言した。
 
 ラズニック判事はその論理に疑問を呈している。政府がプラスチック製銃を禁止する法律をどれほど「熱心に」取り締まれるかどうかを疑問視している。3Dプリンター銃が最初に作られた場所の検知や、追跡不可能な銃を積極的に阻止することまではしないだろうと指摘した。
 
「誰にでも銃が保有できてしまうことにより、靴爆弾や911といった事態につながりかねない」とラズニック判事は発言した。

 精神障害者や重犯罪人などの身元調査で不合格になるような人々でさえ、3Dプリンターを手にすれば銃を作ることができる。

「おもちゃだと思った銃で、子どもが他の子どもに発砲してしまう事件が起きている。3Dプリンター銃は本当のおもちゃのように見えてしまう」

 差し止め命令の期限は8月28日に定められた。

 提訴している州はワシントン、コネチカット、メリーランド、ニュージャージー、ニューヨーク、オレゴン、カリフォルニア、コロラド、デラウェア、ハワイ、イリノイ、アイオワ、ミネソタ、ノースカロライナ、ロードアイランド、バーモント、バージニア、マサチューセッツ、ペンシルベニア、首都ワシントンである。

By MARTHA BELLISLE, Associated Press
Translated by Conyac

Text by AP