中絶の権利を憲法に、仏で動き 米最高裁の中絶判断受け

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 実際、中絶の権利の獲得は、ヨーロッパ各国でもスムーズに進んだわけではない。最も早く中絶を合法化したのは1938年のスウェーデンだったが、その次に英国が合法化に踏み切ったのはそれから29年後の1967年であり、スペインに至っては今世紀に入った2009年のことだった。

 また、ポーランドでは逆方向の動きも出ている。同国憲法裁判所は2020年10月、中絶を可能とする条件から胎児に重篤な障害があった場合を廃止したのだ。この決定が国内に大規模な抗議デモを引き起こしたことは記憶に新しい。

◆チリでは9月4日に国民投票
 南米のチリでは、9月4日に国民投票で是非を問われる新憲法が、妊娠の終了の権利を含んでいる。これが承認されれば、チリは中絶の権利を憲法に含む世界最初の国となる。(RTL 5minutes、6/27)

 チリがこれまでかなり保守的な国であったことを考えると、驚きの変化だ。たとえば、同国では、1999年まで同性愛関係は犯罪視され、離婚も2004年まで承認されていなかった。中絶の全面禁止が解かれたのも、わずか5年前の2017年に過ぎない。とはいえ、現在では、73%の国民が人工中絶の権利に理解を示している。(同)

 アメリカの動きは、チリでは逆に中絶反対運動派の意気を上げているという報道もあり、9月の国民投票が気にかかるところだ。

 いずれにせよ「ロー対ウェイド」の終焉は、中絶の権利は既存のものではなく、絶え間ない闘争によって獲得し守り続けるものなのだと、改めて世界各国に知らしめた形だ。

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Text by 冠ゆき