米、女性の権利の格差広がる 中絶禁止州の女性は他州で手術

「ロー対ウェイド判決」を覆す連邦最高裁の判断に反対する人々(6月30日)|J. Scott Applewhite / AP Photo

 また中絶が禁止になった州で運営していたクリニックが、中絶が許可されている隣接州に移動し、州境近くでクリニックを開くという対策を取っている場合もある。ノースダコタ州唯一の中絶クリニックは、同州から1ヶ月以内に閉鎖することを命令されたため、州境を越えて隣接するミネソタ州内に移る予定だが、クラウドファンディングサイト『ゴーファンドミー』で現在までに寄付金を91万ドル以上を集めている。

◆民主党州と共和党州で女性の権利に差
 アメリカではこのように、医療を含め比較的福利厚生が充実している州と、そうではない州に分断されてきており、その境界線は民主党か共和党かの政党支持で明確に分かれている。もちろんそれは女性の権利についても同様だ。

 経済サイト『ウォレットハブ』が2021年8月に公表した「女性の権利」に関する調査結果によると、アメリカで最も女性の権利が守られている州は1位がネバダ州、2位がハワイ州、3位バーモント州と言う結果となり、それ以下も6位まではすべて民主党州が占めた。一方、最下位50位はユタ州、49位アイダホ州、48位テキサス州で、下位8州はすべて共和党州が占めている。この調査は項目が「仕事環境」「教育と健康」「政治力」の3つのカテゴリーに分かれ、そのなかにある全17項目の合計点数で結果が算出されているが、この時点では憲法で保障されていた中絶の権利は入っていない。この調査を現在実施したならば、民主党州と共和党州の差はもっと大きくなるだろう。最高裁判事9人のうち6人が保守派である現状では、11月の中間選挙で民主党が大勝しない限り、しばらくこの流れが続く可能性が高い。

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Text by 川島 実佳