英公共放送の受信料廃止か 担当大臣が示唆
◆さまざまな代替案 いずれも採用には弱点あり
ガーディアン紙は、受信料制度が廃止された場合の代替となる資金調達法を紹介する。最初に上げているのは、すべてのブロードバンド接続に課金する方法だ。既存のプロバイダーを通じて集金できるため比較的簡単だが、月13ポンド(約2000円)が接続費用に上乗せされるため、一部の世帯にとっては大きな負担になる可能性もある。
政府が補助金を出すという考えもあるが、これにより放送が政府の都合のよいものになる可能性もある。また、もしもBBCの資金がほかの予算と一緒に決定されるなら、どのようにBBCの編集の独立性を保つかも問題になるとしている。
広告掲載を許可するというのも一案だが、広告収入だけで現在のすべてのサービスを維持することは難しい。さらに、視聴率の高い番組にフォーカスが移り、ニッチな視聴者が高く評価する番組は縮小されることが予想される。
所得に特別税を課すという方法もある。これはスウェーデンで採用されており、受信料を廃止して、代わりにすべての勤労成人から所得の1%(上限あり)を公共サービスメディア専用の財源として徴収している。これなら政府に干渉されるリスクを減らせるが、国民にとってはさらなる増税と理解され、政治的に難しい。
ネットフリックスなどの近年の人気ぶりを見て、サブスク形式を多くの保守党議員が求めているが、これは技術的な壁があるうえに、現在の「誰でも自由に視聴できるBBC」は消えることになる。そのため、商業的に実行可能な部分は民営化し、新組織で規模を縮小して公共サービスを続けるという意見もある。さらに過激なところでは、BBCを廃止し、市場の支配に任せ民間企業にやらせるという考えもある。
◆1日66円をどう見る? 公共の利益が焦点
学術系ニュースサイト『カンバセーション』は公共放送の価値に関する議論を紹介している。たとえば、公共放送は雇用やクリエイティブ産業への投資によるプラスの経済価値を生み出しており、コンサルティング会社KPMG は、BBCの支出1ポンドごとに1.63ポンドの経済活動が生み出されたと推定している。また、インフラ、スキル、技術革新への投資を通じて生み出す「産業価値」も大きいと見られている。
研究者たちは、公共放送としてのBBCにさまざまな問題点があるのは事実だが、1日43ペンス(約66円)の受信料が普遍的な公共の利益のために不可欠なものなのか、逆進的で時代錯誤な税なのかが問われるところだとしている。
BBCの最高経営責任者ティム・デビ―氏も同様の考えだ。BBCはこれまでイギリスのクリエイティブ産業構築に非常に貢献してきたと考えており、受信料廃止議論は国民が普遍的な公共サービスメディア組織を望むかどうかが焦点だとする。商業的な運営に移行することは可能だが、そうなればいまと同じ番組やサービスの提供は維持できないと主張している。(インデペンデント紙)
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