医師が「美術鑑賞」を処方、心身の治療に カナダ、ベルギーで

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◆WHOも認めるアートと健康の関係
「美術館鑑賞処方」は、自らのクリエイティブな活動を通して癒しを得るいわゆる「アートセラピー」とは異なるものだ。だが、昨今では、鑑賞という受け身なアートとの関わり方も心身に好影響をもたらすと認められている。たとえば、2019年11月に世界保健機関(WHO)がアートと健康との関連について発表した分析調査もそのひとつだ。このなかで、WHOはアートを「舞台アート(音楽、ダンス、歌、演劇、映画)、ビジュアルアート(工芸、デザイン、絵画、写真)、文学(執筆、読書、文芸イベント参加)、文化(博物館見学、ギャラリー見学、コンサート鑑賞、観劇)、オンラインアート(アニメーション、デジタルアートなど)」の5分野に分けて定義し、いずれも心身の健康改善に役立つと結論付けている。また、医療施設での具体的なアートの取り入れ方としては、ピエロの小児科訪問、音楽、工作の取り入れなどを上げている。

 実際、筆者の知るヨーロッパの病院やクリニックでは、待合室の壁に絵画を掛け、心を落ち着かせるようなBGMを流しているところが少なくない。それもまた患者の不安を軽減させ、血圧などを落ち着かせるのに一役買っているのであろう。

 治療の一環としての美術館見学。ブリュッセルの試験運用とその報告に期待したい。

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Text by 冠ゆき