イスラエルで感染再拡大している理由 ブースターだけでは解決できないと指摘も

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◆実は接種率不十分? 感染拡大は未接種者から
 イスラエルほどのワクチン接種率の高い国でも感染が拡大していることに驚きを感じるが、実は若い世代には接種を受けていない人が多い。12歳未満は接種対象ではなく未接種だ。また12歳から20歳では接種を希望しなかった人が多い。そのため全人口で見た2回接種率は58%となり、専門家は十分とは言えないとしている。未接種の場合はおそらく入院や死亡の可能性が高まると見られている。(NPR)

 イスラエル政府へのアドバイザーでもある、ワイツマン科学研究所のエラン・セガール氏は、ワクチンを受けなかったごく一部の人々の代償を非常に多くの国民が払っていると述べる。未接種者が感染の急拡大を助長した一方で、国内ではここ数ヶ月厳しい規制もなく経済活動を行ってきた。その結果大量の感染者が出てしまい現在のような状況になってしまったと説明している。(同)

◆医療崩壊も? ブースターは解決策ではない
 政府が最も恐れているのは医療への負荷が高まることだ。タイムズ・オブ・イスラエル紙によれば、保健省はこのまま感染者数が増え続ければ来月中旬には重症者が2400人に達する可能性があると警告している。

 感染拡大を抑えるため、政府は3回目のブースター接種に踏み切った。保健省のデータでは、すでに140万人以上が3回目接種を終えている。まだ初期段階とはいえ、ブースターは2回接種者と比べ感染防御効果を再度3倍に、重篤に対する予防効果は5~6倍に高めると専門家は述べている。(タイムズ・オブ・イスラエル紙)

 しかしテクニオン・イスラエル工科大学のDvir Aran氏は、ブースターだけではデルタの急増は抑えられないとする。現在の増加は急激で、60歳以上の3分の2に接種したとしても、1~2週間で病院はいっぱいになると述べる。まだ1回目、2回目を完了していない人へのワクチン接種や、マスク、ソーシャルディスタンスなどイスラエルがすでに捨て去ったものも必要だとし、「ブースターが解決策だと思わないでほしい」と、ブースターを検討している国に対し厳しいメッセージを出している。(サイエンス誌)

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Text by 山川 真智子