前大統領収監で大規模暴動 南アフリカの「法の支配」と社会不安

ズマ前大統領|Shiraaz Mohamed / AP Photo

◆ズマ支持者の抗議を発端に暴動発生
 法の支配の「勝利」は南アフリカにとって朗報のはずであったが、ズマの影響力の高さは好ましくない結果をもたらした。ズマの収監を受けて、前大統領の支持者は暴力的な抗議行動を開始。ズマの出頭と同日、武装集団が物流トラックをハイジャックし、料金所付近の道路を封鎖。さらに25台の車両に放火。その後もタイヤや木材などを燃やして、道路にバリケードを張った。この料金所はサブサハラ・アフリカ最大の貿易港であるダーバン港(クワズル・ナタル州)と、南アフリカの経済の中心地、首都ヨハネスブルグがあるハウテン州を結ぶ、主要な物流ルートとなっている。この暴動に続き、クワズル・ナタル州とハウテン州のショッピングモールや商店が、放火や略奪の被害にあった。(アルジャジーラ

 フィナンシャル・タイムズは、今回の暴動はアパルトヘイト以来の最悪の情勢不安となったと報じている。一連の暴動により、ズマの支持層を抱えるクワズル・ナタル州では330名以上が犠牲になった。人的被害に加え、経済的な打撃も大きい。同紙によると、今回の暴動の拠点となったクワズル・ナタル州とハウテン州は、9つの州で構成される南アフリカ全体のGDPおよび人口の半分を抱える主要な州だ。もっとも直接的な打撃の一つが、スーパーマーケットが破壊されたことにより、食品へのアクセスが困難になったことだ。南アフリカ最大のスーパーマーケットチェーンのショップライト(ShopRite)については120店舗が被害にあった。

 アルジャジーラによると、略奪の実態は、困窮から食品や日用品などの生活必需品を奪っているケースと、高価な電化製品などを奪っているケースがあるようだ。暴動はズマの解放を求めるグループ、RET(Radical Economic Transformation、抜本的経済改革)が関与して計画的に行っているとみられている。ラマポーザ大統領は2万5千人規模の軍隊を配置して、事態を収束させたが、不安定な状況は続きそうだ。また経済的損失の回復にはさらなる時間を要する。

 コロナウィルスの第3波、暴動と略奪の状況を経て、南アフリカ政府は、#RebuildSA(南アフリカの再建)をキーワードにした発信を行っている。国民の不満と不安が新たな暴動を巻き起こし、さらなる経済打撃につながるといった負の連鎖は避けなければならない。

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Text by MAKI NAKATA