ミャンマー、深刻な感染急拡大 医療崩壊、クーデター影響広範に

ヤンゴンの火葬場の外で待つ人々(7月14日)|AP Photo

◆進まないワクチン接種
 クーデター前の2020年、ミャンマーは東南アジアで最初にワクチンキャンペーンを開始した国のひとつだったが、そのキャンペーンは、人口の4%未満が1度目のワクチン接種を受けた段階でほぼ中断している(ガーディアン)。接種を完了した人の割合は3.2%程度と言われる。

 理由としては、まずワクチン不足が挙げられる。クーデター前のミャンマーはインドから3000万回分のワクチンを購入することで合意していたが、日本経済新聞(6/29)によれば、300~500万回分が届いたのち、インドからの供給はストップ状態だ。また、国民の多くは軍事政権に不信感を抱いているため、当局の勧めるワクチンを受けたがらないという事情がある(ガーディアン)。しかも、クーデター前の文民政府にワクチン接種キャンペーンの責任者として任命されていた人物は、軍事政権に逮捕された医者のひとりなのだ。

 ミャンマーの深刻な状況を受け、イギリスは、19日から同国を危険度の最も高いレッドリストに載せることを決めた。在ミャンマー日本大使館も13日、在留邦人に一時帰国の検討を再度促す通知を出している。

 筆者は、ミャンマーの友人からの連絡がきっかけで、同国の惨状を知ったのだが、今月届いたメッセージには、家族親戚全員が新型コロナに感染し死者も出たことが記されていた。「新型コロナは国中いたるところに蔓延し、政府はこれをコントロールできていない」「医療センターは足りず、酸素も足りない。医者も足りない」とも書かれており、まさに現在のメディア報道を裏付けている。

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Text by 冠ゆき