跡地から先住民の墓や遺骨 カナダ寄宿学校の歴史が問題に
◆建国記念日も自粛 デモ行進広がる
カナダは7月1日に建国記念日「カナダデー」を迎えたが、遺骨発見の事件を受け、複数の都市で記念行事が縮小、中止になった。トルドー首相はこの日を「反省の時」にすると表明。オタワではハッシュタグ「#カナダデーを中止せよ」のデモ行進が行われ、先住民の寄宿学校制度の犠牲者認知の象徴でもある、オレンジ色のシャツを着た人々で埋め尽くされた。(ロイター)
トロント大学のAkwasi Owusu-Bempah教授は、カナダは歴史の清算をしているとして、社会の不平等を認識せずこの日を祝うことはできないと述べた。トルドー首相は、カナダの歴史的失敗を振り返ることが迫られていると述べ、分断の壁を取り払い、過去の不正を正し、より公平公正な社会を築くために、もう一度お互いから学び、聞くことに尽力しようと話した。(同上)
◆植民地時代までさかのぼる 問われる責任
一方カナダデー当日、寄宿学校制度に抗議し正義を求める人々により、植民地時代の銅像が破壊されるという事件も起きた。マニトバ州ウィニペグではヴィクトリア女王の銅像が引き倒され、赤いペンキで汚された。「大量殺戮にプライドはない」「彼女を降ろせ」と叫び声が上がり、残った銅像の台座の上で旗を振りまわしたりする人もいたという。ヴィクトリア女王は、カナダが英連邦制内の自治領となり先住民との条約交渉を行い、連邦政府が寄宿学校政策を実施したときの君主だった。同時にエリザベス女王やイギリス海軍の海軍士官だったジェームズ・クック(キャプテン・クック)の銅像も倒された。(英インデペンデント紙)
ヨーロッパ大学キプロス校のジェームス・マッケイ准教授は、寄宿学校問題を作り出したのは大英帝国領時代のカナダだと指摘。先住民の生活の破壊は天然資源を欲した英企業にとって必要だったとし、イギリスの過去の精査が必要ではないかとしている。ケント大学のデビッド・スターラップ氏も、イギリスの植民地政策が寄宿学校の基礎を築いたとし、この問題で圧力はイギリスにもかけられるのは当然だという見方を示した。(ガーディアン紙)
さらにほとんどの寄宿学校の運営を行っていた、カトリック教会の責任を追及する声もある。ローマ法王は、寄宿学校制度を経験し生き残った先住民との面会を12月に予定しているというが、今回の遺骨の発見についてはカトリック教会からの声明は出ていない(ABC)。過去の先住民差別の問題はカナダ国外にも波及し、ますます複雑化しそうだ。
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