ハワイ先住民聖地での天体望遠鏡建設、抗議行動が拡大 州知事は苦境に

Caleb Jones / AP Photo

 7月15日、ハワイ島マウナケアの山頂で「TMT(サーティー・メーター・テレスコープ)」と呼ばれる口径30メートルにおよぶ巨大な天体望遠鏡の建設プロジェクトが正式に開始された。「TMTインターナショナル・オブザバトリー」が手がけるこの建設プロジェクトはハワイ先住民のネイティブハワイアン(以下ハワイアン)の間で物議を醸し、建設に反対する抗議行動が続いてきた。同社ウェブサイトによると、TMTのパートナーとしてカリフォルニア技術大学とカリフォルニア大学、インドの科学技術省、日本の自然科学研究機構と国立天文台、カナダ国立研究機関などが名を連ねている。

 地元紙スターアドバタイザー(電子版、6月20日付)の報道によると、ハワイ州のイゲ知事は同日建設開始に正式なゴーサインを出し、「TMTの建設は今年の夏に開始されることが期待される」とコメントした。同知事はまた、「われわれは(TMTの建設を)、ハワイの人々や場所、文化を尊敬するやり方で進めていく」とも語った。この超大型の天体望遠鏡が科学・天文学の進歩に繋がることは間違いなく、また建設でハワイ州に経済的恩恵がもたらされることにも疑いはないだろう。

 しかし、これに猛反発したのがハワイアンたちである。ハワイアンの活動家は知事の発言を受け、マウナケアの山頂で建設を止めるために抗議行動を展開することを宣言。マウナケアとTMT建設をめぐる攻防が開始された(抗議行動はすべて平和に行われている)。

                                                                                                                 

◆建設現場はハワイアンの聖地
 マウナケアは海抜4,207メートルの死火山で、ハワイ州内ではもっとも高い山だ。山頂には「ヘイアウ」と呼ばれる古代ハワイアンが宗教儀式などを執り行った聖地が残されている。日本人にとっての神社のように、ハワイアンにとっては重大かつ神聖な場所である。

 国立天文台TMT推進室はウェブサイトで、TMT建設の場所には「絶滅の危機に瀕する動植物や考古学上の神殿や埋葬地が発見されていない」と述べている。また、「TMT建設地はマウナケア山頂より下の溶岩面にあり、クカハウウラ山頂やワイアウ湖、プウ・リリノエといった文化的にとくに配慮を必要とする場所からは見えない位置」とも明記されているほか、景観やハワイ島固有種動植物、水資源の保護や交通への配慮、安全運用、廃棄物の除去なども行うと述べている。

 しかしTMT建設に反対する住民にとって、争点は必ずしもTMT建設で「マウナケアにどのような配慮が行われるか否か」ではないようだ。ハワイ島ヒロに住むカラニさん(仮名)は、年に20回ほどマウナケア山頂まで足を運ぶと話す。彼は「いったい、マウナケアにいくつの天体望遠鏡を建てればいいのか……いつになったら終わるのでしょうか」と嘆く。

「今までマウナケアに建てられた多数の天体望遠鏡で問題は解決されなかったのに、TMTが建てられたら解決すると言うのでしょうか。ハワイアンは、自分たちの土地や権利が企業や国の利益のために奪われていくことに疲れているのです」とカラニさんは語った。「今ここで私たちが譲歩したら、このパターンは今後も続いていくでしょう」。

 地元テレビ局KITV(電子版)の報道によると、TMT建設には約14億ドル(約1,500億円)がつぎ込まれる予定だ。マウナケアでは現在、ハワイ州立の大学であり、天文学では全米1、2を争う優れたプログラムを有するハワイ大学マノア校が、面積1万2000エーカーにおよぶ山頂部、およびすでに山頂に存在する13の天体望遠鏡を管理している。つまり、TMT建設プロジェクトにはハワイ大学の意思が大きく関わっているのだ。

Text by 相馬佳