ハワイ先住民聖地での天体望遠鏡建設、抗議行動が拡大 州知事は苦境に

Caleb Jones / AP Photo

◆抗議行動3日目、州知事が非常事態宣言発令
 CBSニュース(電子版、7月15日付)の報道によると、マウナケアがTMT建設の場所として選択されたのは2009年のこと。その後、2014年にいったん建設が開始されたものの抗議行動が激しくなり、2015年に中止に追い込まれた。しかし記事によると、昨年10月に最高裁がTMT建設は合法であると判断を下した。イゲ州知事が前述のように建設開始に同意したのはそのような経緯があったためであろう。

 同記事によると、今年7月15日のTMTの建設開始とともにまた抗議行動が開始され、初日はハワイアンの人々がマウナケア麓の道路に座り込み、建設作業員を山頂に行かせないようにブロックした。2日目も同様に抗議行動が行われ、両日とも逮捕者は出なかったが、スターアドバタイザー(電子版、7月17日付)の報道によると、イゲ知事は同日、3日目に突入した抗議行動に対して非常事態宣言を発令。警察にマウナケアの道路や一部地域を封鎖する権限を与えた。その結果、抗議行動に参加していた人々、とくにハワイ語で「クプナ」と呼ばれ敬われるお年寄り33人(一部報道によると34人)が逮捕され、一気に緊張が高まった。オアフ島ホノルルのハワイ大学マノア校でも抗議行動があり、前出のKITVの記事によると、大学職員がデービッド・ラスナー同大学長の辞任を求める騒ぎに発展している。 
 
 また地元テレビ局「ハワイニュースナウ」の7月19日付の記事によると、クプナの逮捕を受け、抗議行動は州内はおろか全米にも飛び火。イゲ州知事は事態の収拾に苦慮しているという。報道によると、マウナケア山頂に続く道をブロックする人々の数は現在千人近くにまで増えている。

◆大統領選出馬の国会議員もTMT建設批判
 また、TMT建設に対する抗議行動は米国会議員の注目も集めている。2020年の米大統領選に出馬したハワイ州選出の民主党議員トゥルシ・ガバード氏は自身のウェブサイトに声明を出し、「法的にTMTの建設は認められたが、宗教的・文化的意義については語られていない。これはTMTよりもっと大きな問題だ。マウナケアについてのこれまでの歴史や、破られた約束、神聖な土地への冒涜(ぼうとく)、そしてハワイ文化に対する尊敬の欠如から来ているのだ」と述べ、TMT建設を批判した。

 今後はこの抗議行動が沈静化するどころか膨れ上がっていくと予想される。ハワイアンの意思を無視して聖地を踏みにじり、他国の研究者の利益を優先させるわけにはいかないはずだ。今後抗議行動が拡大化すれば、TMTの建設が少なくとも当座は中止に追い込まれる可能性もあるだろう。

※一部不適切な表現があったため、内容を見直し、再度公開させていただきました(文中の「TMT建設中はもちろん、マウナケア山頂へアクセスすることは禁止される」は削除いたしました)。(7/31)

Text by 川島 実佳