「北朝鮮よりおかしい」脱北留学生がみた米名門大、意識の高さ

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◆「まさにカオス」
 若い子たちはいかに自分たちが抑圧されているか、どれほど不当な扱いを受けてきたかを語り続けるが、幼いころから餓死する人々を間近で見てきたパク氏には響かない。命を懸けて脱北した経験を持つパク氏は、彼らは自由を手に入れることがどれだけ難しいかを知らないと一蹴した。

 さらに、アメリカの高等教育機関は学生から批判的思考の力を奪い取っていると指摘。北朝鮮とは違い情報の豊富なアメリカで、学生は洗脳されることを選び、しかもその事実を否定していると述べた。もはや常識の喪失度は、北朝鮮出身の自分にさえ理解できないレベルだとしている。ルールもモラルもなく、何がいいのか悪いのかもわからない完全なカオスに陥っており、すべてを壊し共産主義のパラダイスを再建したいのだろうかと困惑している。

◆保守派も懸念 エリート校は転落するのか?
 パク氏と驚くほど似た認識を持つのがアメリカの保守派だ。元軍人で保守系論客のオリバー・ノース氏とデビッド・L・ゴッシュ氏はコラムのなかで、あまりにも多くの大学が言論の自由や真の学問への取り組みではなく、政治的正しさに支配された「wokeな(社会で起きていることに目覚めた)」機関になっていると批判する。

 学生は考え方よりも何を考えるかを教えられ、異なる意見から保護され、感情を論理や理性に置き換えることが奨励されていると指摘。本当は幅広い意見や世界観に触れ、それらについて批判的に考え、自分なりの結論を出すことが必要で、反対意見は尊重されるべきだと述べている。大学側が学生を繊細な感情を持つ子供のように扱うことに問題があり、彼らが自分を中心としない実社会に出たときに、活躍できる教育をしていないとしている。

 保守的な読者層が多い宗教系学術誌「First Thing」の編集者、R・R・レノ氏は、ウォール・ストリート・ジャーナル紙に寄稿し、もうアイビーリーグ出身者の採用をやめたいと述べている。大学にはwokeではない優秀な学生もいるが、彼らは人種差別やその他の罪の告発を恐れて臆病になっていると指摘。この威圧的なキャンパスの雰囲気は理解できるが、それに声を上げず黙っていることに慣れた人を雇いたくないとしている。

 同氏は、アイビーリーグの学生が「1年生で学ぶのは考えていることを決して口にしないこと」と語った話を披露。未来のリーダーを育成すると謳うエリート校は、実際には未来の自主検閲者、つまり未来の従者を要請していると苦言を呈している。

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Text by 山川 真智子