ネットの「キャンセル・カルチャー」に警鐘鳴らすオバマ氏

Ashlee Rezin Garcia / Chicago Sun-Times via AP

 いまやソーシャル・メディアは日常と化したが、人々が他人の投稿や行いを批判し、それが拡散され不買運動や有名人のキャリアの終焉にまでつながるような出来事がしばしば起こっている。このような現象はアメリカでは「キャンセル・カルチャー」と呼ばれているが、オバマ前大統領が、なんでも批判しがちな意識高い系の若者に対して苦言を呈している。

◆白黒つけたい若者 批判はアクティビズムにあらず
 オバマ氏がキャンセル・カルチャーについて意見を述べたのは、シカゴで開かれたオバマ財団サミットにおいて、アクティビズムについて若いリーダーたちと議論していたときだ。オバマ氏は、最近の若者に見られる、他人についてできるだけ批判的になることが変化をもたらす方法だという考えに懸念を示し、それがSNSによって助長されているとした。

 オバマ氏は「もし私が、あなたが正しく物事を行わなかった、または間違った動詞を使った、とツイートしたりハッシュタグをつけたりすれば、私はくつろいでいい気分になれる。だってどんなに私の意識が高いか、あなたにわかってもらえるから」と述べ、会場の笑いを誘った。しかしSNSで公に人を辱めることは、アクティビズムではないとし、他人に石を投げているだけでは、変化をもたらすことはできないと断じた。純粋で、妥協せず、常に政治的に意識が高いという考えから早く卒業すべきで、現実の世界は乱雑であいまいだと述べた。

Text by 山川 真智子