「子供3人なんて無理」冷めた中国市民 一人っ子政策の重いツケ
◆一人っ子政策のツケ 経済的にも体力的にも限界の市民
中国ではいま、一人っ子政策中に誕生した子供が成人し、家庭を持つようになってきた。彼らはまず夫婦で、両親4人の面倒を見なければならない。その上で子供3人を出産するとなると、合計7人を扶養する計算だ。どれほどの経済的、精神的負担となるかは容易に想像がつくだろう。
またこの世代は、両親や双方の祖父母の寵愛を受け、過保護に育てられた。彼らを称する「小皇帝」という言葉が生まれたほどに溺愛されつつ、将来の期待を一身に背負ってきたのがこの世代だ。両親は子供に多くの習い事や、英才教育の機会を与えるための高額出費を惜しまなかった。なにしろ、自分の老後はこの子供にかかっているからだ。そんな親の心理をターゲットに教育機関の費用は高騰し、生活費以上に家計を圧迫。そのため両親は共働きを強いられ、退職した双方の祖父母が代わりに孫の面倒を見るという構図が現在の中国だ。下校時刻になると、年老いた祖父母が学校の周りに集まり、孫を塾やピアノ、書道、バレエなどの教室へ送り届ける光景は、中国ではごく当たり前だ。当然こうした祖父母の体力的負担も、社会問題となっている。
中国政府は、経済的負担が少子化の一因であると認識しており、今回の三人っ子政策に関連して社会保障や、優遇策などを整備していくとも発表している。しかしながら1人の子育てでこれだけ経済的、体力的負担が大きいなか、「3人なんて非現実的だ」という市民のしらけた声が街なかで多く聞かれるのが現状だ。
◆割を食うミレニアル世代 政府は成功を強調
少子高齢化対策として中国政府はまた、現在男性は60歳、女性は55歳と50歳の定年年齢を段階的に引き上げる方針を発表している(中国共産党傘下の英字新聞チャイナデイリー)。これによって将来、減少の懸念がある労働者の数が確保され、国家の安定的経済成長が保てると政府は考えているからだ。
こうした国の方針転換で割を食っているのは、まぎれもなく中国のミレニアル世代だ。「私たちは休む暇もない。政府はもっと子供を作れと圧力をかけ、同時に(定年の引き上げで)もっと長く働き続けろと言う。なんて人生だ」などの恨み節も聞かれる(BBC)。一方で、中国政府は「人々の生活が豊かになり、教育水準が向上し、寿命が延びるとともに、多くの先進国が直面している経済・社会成長の副産物である少子高齢化に直面している」と、あくまでも国の成長を強調し、目前にある問題は、中国独自の問題ではないと強調している(CGTN)。
国民の出産数を国が管理することへの、原初の議論がされないまま、一方的に発表される産児制限。成長を強調する政府と、負担を強いられてばかりと感じている国民の間に、大きな溝があることは確かなようだ。
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