仏パスツール研、コロナ治療薬の治験を開始 過去市販の風邪薬

リール・パスツール研究所|Pierre André / Wikimedia Commons

◆ルイ・ヴィトンから多額の寄付
 同研究所は、続いてヒトへの臨床試験に移るため、フランス医薬品・保健製品安全庁(ANSM)の承認を今年1月から待ち続け、それがようやく6月10日に下りた。これにより、フランス北部5つのセンターで14日から臨床試験が始められることとなった。(キャピタル誌、6/14)

 この臨床試験には、LVMHグループも一肌脱いでいる。昨年10月の段階で、やがて行われる臨床試験のために500万ユーロ(約6億6000万円)の寄付を行ったのだ。

◆クロホクトールの特徴
 リール・パスツール研究所のデプレ科学部長によれば、「クロホクトールの作用は、抗ウイルスであり、抗炎症ではない」。つまり、症状自体を治癒するのではなく、コロナウイルス自体を攻撃するものである。そのため、感染初期の服用では、患者のウイルス量を減らし、感染後期の服用では、重症化を防ぐ効用が期待できる。(トップ・サンテ誌)

 また、「クロホクトールは、レムデシビルと異なり、効果を上げるために濃度を上げる必要がない」。それどころか、「通常使用量の30分の1に薄めてもウイルスを殺すことができる」という。(同上)

◆抗ウイルス薬の重要性
 ワクチン開発済みの現在でも、抗ウイルス薬の研究は非常に重要だ。なぜなら、抗ウイルス薬は、ワクチンと異なり、ウイルスの変異に効果を左右されないからだ。ナッシフ所長は、「抗ウイルス薬は、ウイルスの複製を可能とする基本の構成要素に作用する」と説明する(フランス3)。つまり、通常変異のない根幹に作用するため、変異株に影響を受けないのだ。そうしてそれこそが「我々の研究動機」であると、同所長は述べる。「万が一、ワクチンが効果を失ったとき、抗ウイルス薬は非常に重要となる」という言葉の意味は重い。臨床試験の成功と結果に大いに期待したい。

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Text by 冠ゆき