仏パスツール研、コロナ治療薬の治験を開始 過去市販の風邪薬

リール・パスツール研究所|Pierre André / Wikimedia Commons

 フランスで、あらたな新型コロナ治療薬候補の治験が始まる。昨年の秋、北部リールのパスツール研究所が効果ありと発表した既存の薬品だ。クロロキンのような見切り発車を避けるため、長らく名を伏せられてきたこの治療薬候補とは。

◆市販されていた風邪薬
 その薬はクロホクトールだ。フランスでは、オクトフェンという商品名で1978年から2005年まで流通していた風邪薬で、座薬として使う。2005年に市販が中止されたのは、オクトフェンに問題があったわけではなく、軽症の風邪は自然治癒が可能なのでオクトフェンは不要とされたためだ。(トップ・サンテ誌、6/14)

 リール・パスツール研究所には、分子のデータベースともいうべき非常に大きな化学ライブラリーが存在する。また、同研究所は、以前からすでにコロナウイルス研究にも取り組んでいた。その専門知識を用い、2020年3月から、既存の治療薬に用いられている分子約2000をテストしたところ、2020年夏、クロホクトールの有効性が浮上した。同研究所のナッシフ所長によれば、試験管内の実験でクロホクトールはコロナウイルスの増殖を非常によく阻害し、ネズミを使った実験でもウイルスの複製を止めたという(フランス3、4/13)。

Text by 冠ゆき