国民はスプートニクVに不信感、接種進まず ロシアで感染再拡大

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◆62%は「接種したくない」
 ワクチン接種が進まぬ理由は、ワクチン不足でも、システムの不具合でもない。バイオテクノロジー投資家のアントン・ゴプカによれば、むしろ「スプートニクVワクチンは十分あるのに使われていない」状態なのだ。また、モスクワではショッピングセンターなどでも接種会場が設けられており、予約も要らなければ、日本のような年齢制限もない。(キャピタル誌、5/27)

 では何が理由か? それは、ひとえに接種希望者の少なさだ。レヴァダセンターの調べによれば、4月の時点でスプートニクVを打つつもりがないと答えたロシア人は62%を占めていた(20minutes、6/9)。ちなみに、ワクチンに懐疑的だとされている日本でさえ、ピアッザ調査(5/27)によれば、接種したくないと答えた人は15%のみだ。

◆ワクチン不信は政府不信
 キャピタル誌はモスクワ市で、55歳のヨガ講師や23歳の学生らにインタビューを試みているが、いずれもワクチンへの不信をぬぐい切れない発言が目立つ。ワクチンへの不信は、蓄積した政府への不信でもある。

 社会学者アレクセイ・レビンソンは、「何十年にもわたり、ソビエトとロシアのプロパガンダに痛い目にあわされてきた多くのロシア人は、ワクチン一番乗りを果たしたかったクレムリンの『政治的目標』は『公衆衛生に勝る』と信じている」と説明する。この市民の考えは的外れとも言えない。なぜなら、実際「2020年夏には、ウラジミール・プーチンが2036年まで大統領に留まれるように憲法を改正するため投票を決行し、衛生上のリスクは無視された」からだ。(キャピタル誌)

Text by 冠ゆき