ネパール変異株? 英がポルトガルの安全度を格下げ 妥当性に批判も

ファロ空港に到着した旅行者(5月17日)|Ana Brigida / AP Photo

◆「ネパール変異株」とは
 イギリスが変異株と呼ぶのは、インドで最初に確認されたデルタ変異株のうち、さらにK417N変異を遂げたものだ。BBCによると、現在全世界で90例見つかっており、そのうち36例はイギリス、14例が日本、12例がアメリカとポルトガル、4例がインドで確認されている。日本で見つかった14例のうち13例は、ネパールからの入国者の空港検疫で発見されたという。つまり、ポルトガルよりもイギリスのほうが多くの例を確認しているわけだが、「英国は多くのゲノム分析を行っているため、発見数も多い」のだと同国は説明する(同)。

 しかしながら、これまでも数多くの変異株が生まれては消えていったように、今後「ネパール変異株」が広まる確率はまだ高いとも低いとも言えない。

◆アルファ変異株より40%感染力が高いデルタ変異株
 それよりもいま確実に警戒すべきは、デルタ変異株だ。イギリスのマシュー・ハンコック保健相が6日に言及したように、デルタ変異株(インド型)は、感染力がずば抜けて高いアルファ変異株(イギリス型)のさらに40%上を行く感染力を持つと考えられるからだ(20minutes紙、6/6)。

 だが、このデルタ変異株にしても、ポルトガルではいまのところネパール型12例を含む68例しか確認されていない(BBC、6/5)。そのため、ポルトガルのアウグスト・サントス・シルヴァ外相は、イギリスの決定を納得できるものではないと表明。ライアン・エアーの最高責任者オリアリー氏をはじめ、旅行・観光業者らも科学的根拠に乏しいと批判している(同)。

 夏を目前にして旅行業再開の出鼻をくじいた形のデルタ変異株。その影響は国内にも出ている。デルタ変異株が優勢になるに従い、新規感染者が再び増加傾向にあるからだ。イギリスは制限策の最終解除を6月21日に予定しているが、2週間遅らせる方向での検討を始めたという情報もある(20minutes紙)。最終決定は6月14日に出される予定だ。

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Text by 冠ゆき