ヒトに感染する8つ目のコロナウイルスか イヌ由来、マレーシアで発見

ffikretow / Shutterstock.com

◆数多くある動物コロナウイルス
 この3種以外にも動物コロナウイルスは数多く存在する。国立感染症研究所によれば、「イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ニワトリ、ウマ、アルパカ、ラクダなどの家畜に加え、シロイルカ、キリン、フェレット、スンクス、コウモリ、スズメからも、それぞれの動物に固有のコロナウイルスが検出されている」。ただし、「種の壁を越えて他の動物に感染することは殆どない」とされる。

 だがそれでも、動物からヒトへと感染した結果が、サーズであり、マーズであり、コビッド19だ。このような動物由来感染症はズーノーシスと呼ばれ、現在世界を席巻しているパンデミックの前から、専門家らは次なる疫病の危険性はズーノーシスから起こる確率が高いと警鐘を鳴らしていた。

◆動物コロナウイルスのヒト感染を可能にする重要なカギ?
 今回の発表によれば、2017-18年の間にマレーシア、サワラクにおいて肺炎で入院した301人の患者のうち、8人(2.5%)の鼻咽頭ぬぐい液に、イヌコロナウイルス(CCoV)のRNAが確認された。そのほとんどが、家畜や野生動物との接触が多い農村地域に住む子供たちだった。このコロナウイルスは、CCoV-HuPn-2018と同定された。

 ただし、著者らが念を押すように、患者の肺炎の原因がCCoV-HuPn-2018にあるとは証明されていない。また、感染経路も不明であれば、このコロナウイルスのヒトからヒトへの感染が可能かどうかも不明だ。(フュチューラ・サンテ、5/21)

 オハイオ州立大学のウイルス学者アナスタジア・ウラソワ助教授は、このコロナウイルスの「ゲノムに非常にユニークな変異(欠失)を発見した」と述べている。この特異な欠失は、「ほかのどのイヌコロナウイルスにもないもの」だが、ヒトに感染するコロナウイルスにはあるものだ。しかも「ヒトに感染するようになってからのSARSコロナウイルスとSARS-CoV-2に発見されたものと非常によく似た変異」だという。このことから、ウラソワ助教授は、この変異は、コロナウイルスがヒトに感染するための重要なカギかもしれないと考えている。(タイムズ・ナウ、5/21)

 コロナウイルスの謎を解明するさらなる研究に期待するとともに、ズーノーシスへの警戒を怠らないようにしたい。

【関連記事】
人類自ら招いているパンデミック 次を避けるために個人ができることは?
全頭殺処分命令で混乱、デンマークの「ミンクゲート」 予防のため殺される動物たち
犬が新型コロナを探知 ヘルシンキ空港で試験プログラム開始

Text by 冠ゆき