「移住で年間100万円あげます」イタリアの村の募集に応募殺到

AlexMastro / Shutterstock.com

◆リモートワーク普及が引き金に 海外組の帰国も
 フォーブス誌に寄稿したジャーナリストのレベッカ・アン・ヒューズ氏によれば、イタリアの田舎では職がないこと、自然災害の影響などで、住民の都市や海外への移住が進んだ。イタリアの環境保護団体が行った2016年の調査では、絶滅の危機に瀕している村が2500もあるという。とくに伝統的に貧しい南部では、19世紀後半から1970年代半ばまでの海外移住の増加で大都市でさえも人が離れ、現在でもゆっくりと人口減少が進行している。

 これを食い止めるのに役立ったのが、近年有名になった、改装を条件に田舎の空き家を1ユーロで売り出すオークションだ。世界中から希望者が現れ、小村の急激な過疎化を救っている。

 さらにパンデミックで、都会の閉鎖的なアパートに閉じ込められた人々が、景色や空気が良く、社会的距離も十分な村の生活に注目し始めた。リモートワークが常態化したことで、イタリア人の都市から田舎へのダウンサイジングが始まっているという。また、海外に移住していた若いイタリア人の帰国も、リモートワークが可能になったことから増加しているという。(フォーブス誌)

 サント・ステーファノ・ディ・セッサーニオ以外にも現金給付で移住者を呼び込む村もあるという。タイムズ紙によれば、イタリアではEUが支援するCovid復興基金を利用し空き屋や集落の修復を始めるということで、都会からの移住者に対するさらなるインセンティブとなりそうだ。

◆デジタルノマドも歓迎 減税措置も
 フォーブス誌によれば、高速インターネットを整備したりコワーキングスペースを設置したりする小規模自治体も現れており、パソコン一つでどこでも働く「デジタルノマド」の取り込みも盛んだ。

 イタリアの英字紙フロレンティーンは、パンデミックをきっかけに、オンラインで働くことができる人が増えたと指摘。世界中の何百万人もの人々が地理的な制約を受けずに自由に移住先を選ぶことができるようになり、各国はその労働者と収入を呼び込むことを目指していると述べる。

 同紙によれば、イタリアでは2020年1月1日時点で国外に2年間住んでいた人がイタリアに税務上の居住地を移した場合、5年間は70%の減税措置が受けられる。さらに中南部地域に住むと決めた人には90%近くの減税措置がすでに導入されている。

 リモートワークをしながらイタリアの質の高い田舎暮らしを楽しみたい人には朗報だ。もちろん適切なビザさえあれば日本人も対象なので、興味のある方は調べてみることをお勧めする。

【関連記事】
フィンランドの「90日お試し移住」に応募殺到 世界のIT人材獲得へ
「移住したい国」日本は2位 北米、東南アジアの人々から強い支持
イタリアの町「家を無料であげます」 日本の過疎地域との共通点

Text by 山川 真智子