売春は合法、買春は違法 フランスの矛盾

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◆2016年から買う側が取り締まり対象に
 そうして、2016年あらためて定められたのが買春取締法だ。これにより、売春勧誘は違法ではなくなり、代わりに買春側に、1500ユーロ(約20万円)の罰金(再犯は3750ユーロ)を科すことが決まった。顧客を罰することで、売春従事者を守ろうというスタンスを明確にしたわけだ。一見すっきりまとまったように見えるが、実際には多くの問題を抱えている。そのことに最も早く気づいたのは、当の売春従事者らだ。2016年4月に同法案が可決されようというときには、国民議会前に約150人の売春婦が集まり抗議デモを行った。売春婦団体の代表者はこの法案を「偽善的だ」と一刀両断。罪に問われることになると買春客が警戒し、売春婦は秘密裏に活動せざるを得なくなるため、顧客に無理を押し付けられる可能性がある、と主張した。(France inter

◆撲滅か、法制化による保護か
 残念ながら、5年後のいま、その懸念は一部現実となっている。フランス・アンフォ(4/13)のインタビューにこたえた売春婦のひとりは、買春取締法のせいで顧客が減り、その質も落ちたため、困窮した生活を余儀なくされている同業者が少ないことを語っている。その現状から、取り締まりよりも「売春従事者のための法的な枠組みを作る」ことが必要だと考える団体も複数存在する(同)。

 取り締まり自体が、それほど積極的に行われていないことも問題だ。同法以降、罰金を科された顧客は、年平均1300人と、あまりにも少ない(同)。

 だがその一方で、買春取締法が福音となったケースもある。13歳で売春を始めたコンゴ出身の元ストリートチャイルドはその一例だ。彼女の場合は、同法がきっかけとなり、売春から抜け出る人を助ける団体に支えられ、生活を立て直すことができたという。ただし、この5年の間、彼女と同じように売春から足を洗うことができたのは564人に過ぎず、全体からみればごく少数だ。(同)

 買春の取り締まりも不十分なら、売春をやめたあとの受け皿も不足しているフランスの現状。問題は山積みだが、まずは買春が違法なのに売春が合法である矛盾を、どちらの方向に是正するか定める必要があるだろう。

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Text by 冠ゆき