現代の奴隷を重視するあまり、売買される子どもたちが隠されてしまう事情

271 EAK MOTO / Shutterstock.com

著:Alinka Gearonバース大学、Lecturer in Social Work specializing in child trafficking and child protection)

 ここ数年、現代の奴隷にまつわる犯罪が大きな注目を集めている。英国政府は2015年、現代奴隷法を制定。テリーザ・メイ首相は、「奴隷の元締めは、その地で収容し、新たな厳罰を科す」ことを望むと発言した。

 しかし実際、「現代の奴隷」とは何だろうか?英国の反奴隷コミッショナーによると、現代の奴隷とは人身売買のことである。しかし両者は同じ概念ではない。これを同一視してしまうと、一部の被害者を見過ごしてしまう。

                                                                                                                 

「現代の奴隷」という言葉は、誰もが賛同しないある種の道徳的な怒りをかきたてる。脆弱な人々が劣悪な労働環境で強制的に働かされたり、「奴隷の監督人」が労働搾取で起訴されたりするニュースを私たちはよく耳にする。労働搾取を重視する新法では、企業に対し、サプライチェーンの透明性を示し、社内で奴隷労働がないことを示すため「現代の奴隷声明」を作成することを要求している。

 しかしこれを重視するあまり、実際に起きている人身売買の一部が取りこぼされてしまう。特に子どもの売買は、あらゆる関心が現代の奴隷に向かうことで表に出なくなっている。子どもたちは、大人が支配する労働市場の中に隠れていることが多い。個人の住宅、大麻工場、売春宿にいる子どもたちを搾取する人身売買業者の地下活動によって状況は悪化してしまう。

 人身売買された子どもや若者がただ労働搾取されているだけではないことは、周知の事実である。性的、肉体的にひどい仕打ちをしたり、犯罪に利用したりする虐待者によって、子どもたちは売買、転売されてしまう。

 私たちは、子どもの人身売買としてまだ認知されていない子どもの搾取や被害を明らかにしなくてはならない。例えばロンドン、パリ、ミラノでモデルの契約があるという夢を売られて、実際には薬物乱用、性的搾取、強姦される子どもたちのことだ。

 今日の現代奴隷の経済的側面に重きを置く考え方は、あまりにも狭義で、かつ成人に特化しすぎている。

 英国では、人身売買の定義、売買が発生する方法、被害者への影響、起こり得る多くの形態についてやっと理解が進み始めたところだ。では、私たちが言う変化はなぜ必要なのか?

◆失われた機会
 現代奴隷法は、被害者が前に進み出やすくする1つの機会だった。しかし制定において重視されたのは、利益のために労働を搾取する人々の訴追だった。

 同法は人身売買業者やギャングへの罰則強化も導入した。しかし驚くべきことに、業者よりも被害者自身が人身売買に関連する犯罪で訴追されるようになったのだ。被害者が犯罪視され続けているという懸念を受けて、制度的な保護条項が後から盛り込まれた。

 しかしその条項による保護を受けるためには、子どもたちは「合理的な人格テスト」を受けねばならず、子ども自らが人身売買された証拠の提出を求められる。しかし子どもたちはどのようにして、自分が心理的に操られたり、強制されたり、より良い生活への希望を煽る説得力のある話を売られたりしたことを証明できるだろうか?

 売買された子どもたちを対象とする最新の調査によると、被害者を支援するよう作られたはずの制度は、未だ移民や訴追に重点が置かれているという。この方法では子どもたちの助けにはならない。子どもたちを隷属状態から解放する支援にもならない。

 子どもたちが勇気を出して警察や移民当局に駆け込むケースもあるが、話を信じてもらえず、売買業者の元に帰されてしまう。暴力を振るわれ、使われ、性的な目的で売られたと明確に訴えていてもだ。子どもでも補導され、人身売買がらみの罪で起訴され、場合によっては成人刑務所に収監されることもある。

 この状況が変わらなければ、子どもたちは隠れたところで何回も同じような虐待を受けることになるだろう。喫緊の対策が求められる。

 売買された子どもを対象とした調査では、最前線の組織に子どもたちが助けを求めても、人種主義者や外国嫌悪者のスタッフが応対する機会がひじょうに多かったことも浮き彫りとなった。移民中心の制度の中で、子どもは話を聞いてもらえない、信じてもらえないと思ったという。しかし、引き続き子どもの人身売買を含む「現代の奴隷」問題への対処にあたっているのは、経済的、移民的側面を重視する内務省である。

 現行制度は子どもたちの助けになっていない。人身売買の被害者が実際に語る内容に耳を傾ける必要がある。子どもたちが受けている被害や虐待により適切に対処するためにも、英国では早急に、教育省が人身売買問題を子どもの保護や厚生の問題として所掌すべきである。

 子どもの人身売買は移住や移民の問題ではない。また、この問題の解決は、経済的理由や訴追のためであってはいけない。虐待や搾取の撲滅に向け、子どもたちは大人の助けを求めている。他のどの問題よりも子どもの保護を最優先課題にすべきである。

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by Conyac

The Conversation

Text by The Conversation

Recommends