喘息治療薬、コロナ患者の回復早める 英オックスフォード大が臨床試験
◆吸入薬使用者は感染からの回復が早い
喘息治療薬はさまざまなものがあるが、本試験では吸入ステロイドのパルミコート(一般名:ブデソニド)を使用した。十分な登録者数が確保できたため、募集は今年3月末に終了した。
同大学の発表によると、参加した感染者は、併存疾患のある50歳以上、および感染前に健康には問題がなかった65歳以上で、751人がパルミコートを1日2回、2週間にわたって吸引し、1028人は解熱鎮痛薬を飲むなど通常ケアのみだった。その結果、自己申告による回復までの日数の中央値(ちょうど真ん中になる値)はパルミコートを使った人たちの方が3日短く、吸入薬による治療が通常ケアよりも優れている可能性が高いことが示された。
また、パルミコート使用群の32%は2週間以内に回復したのに対し、通常ケア群では22%だった。
入院した割合に関しても差が見られ、パルミコート使用群は8.5%、通常ケア群では10.3%と通常ケア群が多少多かったものの、中間報告では、パルミコート使用が入院を減らすという点は確定できないという。
本試験に携わっている調査者たちは、喜びのコメントを述べている。その1人、同大学ナフィールド・カレッジのプライマリケア健康科学部クリス・バトラー教授は以下のように言う。
「プリンシプルでは、比較的安価で広く一般に行き渡っている薬により、新型コロナウイルスの重症のリスクが高い人が副作用をほとんど起こさずにより早く回復し、回復後もよい状態を保ち、健康を改善するのに役立つというエビデンスを発見しました。地域で新型コロナウイル感染者をケアしている世界中の医師たちに、治療を決定する際にこのエビデンス(パルミコートを使うこと)を検討していただきたいです」
BBCによると、国民保健サービス・イングランド地域の医療ディレクターであるステファン・ポウィス教授は、かかりつけの医師たちは患者と合意すればこの吸入薬を処方できるだろうと言い、本試験の現時点での結果を喜んでいるという。
残りのデータ分析を含めた本試験の最終報告は、4月末になりそうだという。
◆さらなる試験が必要
今回の結果は他国でも話題になっており、ドイツでは常識を覆すものだととらえられている。スイスでも報道されているが、歓喜している医師たちばかりではない。
チューリヒ大学病院の感染症医ニコラス・ミューラー教授は、本薬を適用するのはまだ早いという姿勢だ。
「本研究は非常に興味深いです。この結果が、ほかの患者でも見られることを願います。しかし、それまでは我慢が必要だと思います。いまはまだ、劇的な効き目を発揮する薬だと言うことはできないでしょう。とにかく新しい研究でどういう結果が出るか待つことです。とはいえ、ごく少数の患者にはこの薬をどうしても使いたいかどうかは検討できるでしょう」(スイス放送協会)
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