日本の「さかのぼり調査」、フランスがテスト採用へ 誰から感染か追跡

Michel Euler / AP Photo

◆フランスの現況には適さない?
 だが、いまのフランスに「さかのぼり」調査を採用する意味があるのか疑問はある。というのも、日本でさえ、感染者の増加に伴い、追跡しきれないケースが増えているからだ。たとえば東京は今年1月、逼迫する保健所業務を減らすため、「積極的疫学調査」を一旦縮小している。

 フランスの医療保険組織の発表によれば、「さかのぼり調査」を開始するのは、コート・ドール県とロワール・アトランティック県の2県のみで、期間は4月末までだ。同国も、「(さかのぼり調査は)感染のあまり拡大していない地域で行う必要がある」(20 minutes紙、4/1)という認識はもっており、同2県も条件を満たす地域として選ばれている。だが、その2県でさえ感染者数は日本と比べればかなり多い。コート・ドール県の人口10万人当たりの感染者数は4月1日227人、ロワール・アトランティック県で286人となっている(ル・モンド紙)。人口が日本の半数強のフランスで、連日数万人の新規感染者を記録しているのだから、当然といえば当然と言える。

 追跡調査は、非常に多くの労力を伴うものだ。同国もそのことは自覚しており、今回のテストで効果が認められても、すぐにさかのぼり調査を採用するわけではなく、感染が下火になってから採用したいと考えている(20 minutes)。

◆日本でも再び「後ろ向き」調査に力を入れる動き
 奇しくも日本でも、ちょうど「後ろ向き」調査を見直す動きが出ている。東京都は2月26日、いったん縮小した追跡調査(前向きと後ろ向き双方)を再び拡大するよう保健所に通知した。また、「積極的疫学調査を拡充するため、9月時点で8人だった「トレーサー(追跡)班」を60人以上に拡充」し、さらに100人体制を目指している(産経新聞)。これにより「見えない感染源」の特定を図る意向だ。

「さかのぼり調査」の効果をフランスで実感できるのは、まだしばらく先のことになりそうだが、その時期が来たときは十二分に日本の手法を活用してもらいたいものだ。

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Text by 冠ゆき