「オンライン卒業式なんてジョークだ」大学生の怒りと不満が爆発

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◆大人への第一歩 対面卒業式へのこだわり
 学生たちはオンライン開催に納得せず対面を熱望しており、それには理由がある。まず大学の卒業式は、彼らにとっては人として成長していく上での通過儀礼(rite of passage)だ。米セントラル・ワシントン大学の学生メディア『オブザーバー』の学生コラムニストは、壇上を歩くこと自体が卒業生にとっては価値があると述べる。今年の卒業生はオンライン授業で精神的にも学問的にも十分つらい日々を過ごしてきたのに、自分の名前が数枚の写真とともに画面上でスクロールされる卒業式は、割れた窓ガラスに紙を貼って応急処置するようなもの、と不満を述べる。さらに、家族初の大学進学者となる学生もおり、その家族に壇上での晴れ姿を見せることの大切さも訴えている。

 卒業式には厳しいが大型イベントには寛容な、政府や大学の方針にも学生たちは疑問を投げかける。米オレゴン大学では、対面式典ができなかった昨年の卒業生も招いて今年の卒業式を開催するとしていたが、今年6月の卒業式もオンライン開催となった。その一方で、同じ6月に陸上の五輪トライアルという大型イベントが開催予定だ。学生メディア『デイリー・エメラルド』の論説は、大学側が気にするのは金だけだということがまさに証明された出来事だと断じ、4年間学費を払い努力してきたのだから少しばかりの感謝は期待していたのに、と皮肉たっぷりだ。

 イギリスでは感染防止のためロックダウンが続いており、規制解除は段階的に行われることになっている。予定では大規模イベントは6月21日から可能になり、夏には音楽の野外イベント、サッカートーナメントなどの開催が計画されている。政府の計画通りに進めば、対面での卒業式開催の可能性が残されているにもかかわらず、検討の余地を残さない大学は多い。同じ欧州のベルギーでは、昨年10月にマスク着用で卒業式が行われており、学生たちの不満は高まっている(LBC)。

◆規模縮小でも対面を 前向きな大学も
 もっとも例年通りではなくても、対面をできるだけ実現させようという大学もある。米ボストン大学では、市からさらなる規制が出ない限り、屋外での式典をすることにしている(AP)。ハーバード大学と同じアイビーリーグのブラウン大学、ダートマス大学、中西部のミシガン州立大学も屋外開催を計画している(大学ニュース・サイト『Erudera』)。またユタ州立大学は、規模限定、全員マスク着用で対面開催を行うとしている(デイリー・エメラルド)。

 イギリスでもサセックス大学が、小さな学部単位、専攻単位の対面卒業式を夏に開催することを検討しているという。公表にはまだ時期尚早だが、なんとか学生たちの頑張りを称えるための方法を模索中ということだ(大学生メディア『タブ』)。日本も含め、コロナ禍で最も割を食ってきたのは大学生たちだ。できる限り彼らの希望に沿った卒業式となることを祈りたい。

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Text by 山川 真智子