米大学再開、各地でクラスター 集団生活の危険が浮き彫りに

Carin Dorghalli / The Chico Enterprise-Record via AP

 アメリカ各州では毎年8月、長い夏休みが終わった後に小・中・高校や大学を含む大多数の学校で新学年が始まる。しかし今年は新型コロナウイルスのため、多くの学校でキャンパス内で授業を実施するのか、またはビデオを使った遠隔授業を実施するのかで揉めに揉めた。結局、アメリカ全体ではなく各州で状況を考慮して決定されることになったが、筆者が居住するハワイ州では8月上旬当時に新規感染者が増加していたため、秋学期が終了する10月2日まで完全に遠隔で授業が行われることになった。一方、新規感染者数が大幅に減少したニューヨーク州では州内の全学区が学校再開のガイドラインに合格し、キャンパスでの授業実施が許可された。

 小学校~高校までは生徒が長時間をキャンパスで過ごすわけではなく、クラスが終わった後は帰宅する。また各学校の規模が比較的小さいため教師の目が届きやすく担任もいるので、マスク着用やソーシャルディスタンス、手洗いを心がければ、それほどの危険はないかもしれない。しかし、一番の問題は数千、数万人の学生たちが親元から離れ、教師(教授)との繋がりが薄く、また集団でキャンパス内にある寮で生活する場合が多い「大学」であることが、ニューヨーク州の学校再開で明らかになった。

◆パーティーで感染拡大、500人以上が陽性
 感染者数が減少し、安定した状態を保っているニューヨーク州ではこの秋、州内の公立校においてキャンパスで行う授業を再開した。しかしNBCニューヨーク(電子版)によると、同州中部にあるニューヨーク州立大学オネオンタ校で、新学年開始早々新型コロナウイルスのアウトブレイクが発生し、同大学は秋学期のクラスをキャンパスで実施することを早くも断念し、寮に住む学生たちを帰宅させる措置を取った。記事によると、同校では8月24日に新学年の秋学期がスタート。その後すぐに学内・学外で学生による違法のパーティーが行われた後、新型コロナウイルスのアウトブレイクが確認された。20人の新規感染者が確認されたことで学生全員が感染検査を受けたところ、感染者数がその後105人に増加。その後、さらに500人以上に激増したという。同校では現在、100%バーチャルでクラスを実施している。
 
 筆者はアメリカ本土の大学で寮生活を経験したが、新入生の場合はとくに狭い部屋にルームメートとともに暮らすことが多い。しかも大学寮は巨大で、親元を離れた多数の学生が一緒に暮らしていることもあり、パンデミック下では学生たちの行動を監視することが困難である。学部生の場合は年齢も17~22歳程度と若く、親元を離れた解放感もあり、友人とのソーシャルライフが非常に重要になる。アルコールやドラッグに手を出す場合も少なくない。このような環境下では、学生や教職員全員に定期的な感染検査を行わない限り、アウトブレイクが発生するのは時間の問題である。ちなみに、筆者が米西部ワシントン州の大学在学中、キャンパスで麻疹(はしか)が発生し、学生全員がMMRワクチン接種、または同ワクチンを2回接種した記録の提出を義務付けられたことがある。

Text by 川島 実佳