「世界一ロマンチックな鉄道」只見線、海外で反響 地元写真家がPR

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◆集客難しく、一時は廃線の危機
 いまでこそ海外での知名度を高めている只見線も、一時は存続の危機に立たされていた。米CNNは、もともと東北エリア自体が、訪日客の2%未満しか訪れない知られざるエリアだったと紹介している。さらに2011年3月の東日本大震災による原発事故のあおりを受け、福島からは客足が遠のくようになってしまった。

 追い討ちをかけるように、同年7月に新潟県中越から福島県会津にかけての地域を豪雨が襲う。只見線は橋桁が流されるなどの大きな被害を受け、一部区間が不通となる。現在も会津川口から只見間の27.6キロが不通のままだが、JR東日本は2022年上半期の全線復旧を見込んでいる。

 復活を支えたのは、奥会津をカメラに収め続ける郷土写真家・星賢孝(ほし・けんこう)氏の地元愛だ。星氏は只見線の魅力を撮影し、フェイスブックを通じて海外の旅行者にも発信し続けた。また、台湾で写真展を開くなど、奥会津の素晴らしさを伝えるため精力的に活動している。SCMP紙は、「(展示会への)反応は驚くべきものだった」と語る。海外客にはほぼ知られていなかった奥会津のエリアに、国外からの旅行者の姿が見え始めたのだ。氏は第一橋梁を見下ろす絶景ポイントへの階段を整備するよう地元に提言したり、訪問客がさらに楽しめるよう伝統的な渡し船の運行を復活させたりと、次々に策を繰り出している。こうした努力が国内外からの観光需要を増加させ、地元は観光産業の重視に本腰を入れることとなる。一時はバス路線への転換方針が示されていた只見線も、重要な観光資源として存続が決まった。

◆沿線に残る素朴な喜び
 会津地方は魅力的なエリアながら、東京から富士山を経由して京都へ至る「ゴールデン・ルート」から外れていることもあり、まだまだ秘境の趣を残している。これもまた長所のひとつと言えるだろう。英テレグラフ紙(2020年2月13日)は、コロナ以前にイギリスから訪れたエマ・クック氏の旅行記を掲載している。夫婦で来日し只見線に乗ったという彼女は、混雑していない車内からの自然風景を思う存分楽しんだようだ。その途中に位置する三島町は、点在する集落と三島神社で知られ、「日本で最も美しい村」のひとつを自負している。クック氏は第一只見川橋梁を見下ろすビューポイントを訪れた後、ローカル・グルメのソースカツ丼に舌鼓を打ったという。

 沿線には目を楽しませてくれるスポットも多く、SCMP紙は武家屋敷などで名高い会津若松や、只見ユネスコエコパークの一部であるカルデラ湖の沼沢湖などを挙げている。沼沢湖の近くでは、森林浴やキャンプ、そしてカヤックなどを体験できる。都市部から失われてしまった素朴な情景が、人々を引きつけて止まないのだろう。

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Text by 青葉やまと