フランスで進む“コロナ後遺症”に関する動き

嗅覚・味覚の検査を受ける患者(2月8日、ニース)|John Leicester / AP Photo

◆SNSでロングCOVID周知の動き
 2月17日には、ApresJ20(20日後)協会の呼びかけで、ロングCOVIDについての体験を#apresJ20をつけてSNSに投稿しようという運動があった。ApresJ20協会は、ロングCOVID患者を支え、より適した治療の提供や研究の発展を目的として発足した組織だ。

 この日寄せられた投稿の例を挙げると、39歳のセリーヌは、フィットネス指導をする写真とともに「これは以前の私。フィットネスのコーチを週20時間して、フリーランスの看護師としても働き、4人の子を育てていた。いまは、歩くのだけで精いっぱい。ロングCOVIDは皆にかかわる問題(後略)」と書く。

 マチューは、「妻、4歳、9歳の2人の子供と私自身がCOVIDに感染してからもうすぐ1年だ。まだ治らない。頻脈と精神の混濁、息切れ、頭痛、筋肉痛、味覚と嗅覚の異常。いつ(病気だと)認識してもらえるのか」と訴える。クロエは「22歳。病歴なし。COVIDに感染して8ヶ月経つのにまだ治らない。心嚢液貯留、神経障害、全身の痛み。COVID-19で若者は死なないかもしれないけれど、長期に及ぶ多くの問題を起こす」と若者に注意を喚起する。

◆国民議会への提出
 同じ2月17日には、フランス国民議会(下院)に、ロングCOVIDについての決議案が提出された。提出した議員のひとり、パトリシア・ミラレスは、自身も昨年3月に新型コロナに感染しロングCOVIDに苦しんだ経験を持つ。決議案提出の目的は3つある。ロングCOVIDの周知、ロングCOVIDに関する研究を進めること、職業病と認めることの検討である(20 minutes、2/17)。

 フランスでは、2020年9月半ばの政令で、COVID-19を患った医療関係者は、職業病と認められることが決まっている。しかし、これは、重い症状を呈した者だけに限られるため、COVID-19自体は軽症だったのに、その後ロングCOVIDに苦しむことになった人などは含まれないのだ。またフランスでは、職業病と認められた場合、医療費の自己負担は0%になる。給与も普通の病欠であれば50%しか払われないところ、職業病が理由の病欠なら60%、さらに29日以上の療養が必要な場合は80%が補償される。

 実際、ミラレス議員は「私は感染するという不幸のなかでも、入院するという幸運を得た」と明言し、「国が機能するよう(ロックダウン時にも働き続けた)医療関係者や、ごみ収集業者、スーパーのレジ係ら」が、「(ロングCOVIDを患って)職場に戻れないとき、彼らを収入半減の状態では放っておけない」と主張する(フランス・アンフォ、2/17)。

 他国と比べて感染者の絶対数が少ない日本では、ロングCOVIDの認識も研究もフランスよりさらに進みにくいと思われる。だからこそ、他国の状況をしっかりと見定め、学べることがあれば学ぶようにしたいものだ。

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Text by 冠ゆき