ワクチン接種に慎重な日本 海外紙の見る理由、メリットとリスク

Koji Sasahara / AP Photo

 日本では海外ワクチンの場合、日本人に投与しても安全性や効果が同程度ということを確認するために、国内でも治験が必要という考え方だ。しかし、東京大学医科学研究所の石井健教授は、わずか200人程度の国内治験は、あまり意味がないと述べる。ファイザーの治験にはアメリカで4万人が参加し、そのうち800人はアジア系だった。安全性や効き目への遺伝学的影響のエビデンスとしては、米治験のほうがよりよい材料を提供していると、同教授は見ている(フィナンシャル・タイムズ紙、以下FT)。

◆接種急ぐより不安の払しょくが先 反ワクチンを意識
 WPは、国内治験が求められるのは、日本の官僚的警戒心と外国製薬企業への不信が影響しているという見方を示している。日本ではMMRやHPVワクチンと同様に新型コロナワクチン接種への不安が根強く、非常に慎重な官僚の文化があるからだと言う。経営コンサルタントのロシェル・カップ氏は日本人の警戒感について、「完璧」を求め間違いを許さず、物事が上手くいかないと責任をほかにも求めるという日本文化に根付いている、と指摘(WP)。緊急時においては、完璧は官僚を麻痺させる危険もあるとしている。

 WPは、G7のなかでワクチン接種が始まっていないのは日本だけだと批判的だが、一方、ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)は、日本は感染が比較的抑えられており接種の緊急性は低いとしている。接種を急ぐよりも、いかにして人々のワクチンへの不安を払拭するかが大切で、国内治験は人々の懸念を和らげるためでもあると指摘している。また、後発組は先に接種を開始した国々の状況やトラブルから学ぶことができるため、その点でもチャンスを得ているとしている。もっとも、注意すべきは世界各地で発見されている変異株で、これによる感染が広がれば、接種開始の遅れが命取りとなる可能性もあると述べている。

◆ワクチン品薄 入手遅れの可能性も
 慎重を期す日本だが、世界的なワクチンの供給不足で、遅い接種がさらに遅れる可能性も指摘される。ファイザー、モデルナ、アストラゼネカとワクチン購入で合意しているが、モデルナ、アストラゼネカとも認可までにはまだ時間がかかり、当面ファイザー頼みになるとみられる。ファイザー製は世界的に需給がひっ迫しており、果たして予定通りに日本に納品されるかは定かではないとFTは述べる。

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Text by 山川 真智子