闇サイトに「ワクチン売ります」 フィッシング詐欺など犯罪多発
◆闇売買は危険性大、価格も高騰
製薬業界では、ワクチンが盗まれたり闇市場に流れたりすることへの危機感が高まっており、対策を講じている。いまのところサプライチェーンでワクチンが盗まれるような事件は起きていないが、ワクチンを狙ったサイバー攻撃は多発しており、中国の超低温冷蔵のサプライヤーの幹部を装ってパスワードを盗もうとしたケースなどが報告されている。このような非常に洗練されたやり方は、要冷蔵のワクチンのサプライチェーン分断や知的財産を盗み出すことを狙った、国家の援助を受けた企みではないかと見る研究者もいるということだ(FT)。
もっとも闇サイトで売られるワクチンの多くは、偽物、または在庫が存在しないものだと専門家は指摘している。セキュリティ製品製造を手掛けるチェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジー社の研究者が実際に中国製ワクチンをビットコイン払いで注文してみたところ、発送通知は来たが、商品は届かなかったという。テレグラム・アプリで連絡を取っていたが、業者のアカウントは削除されていた(タイムズ・オブ・イスラエル)。偽物の場合は効果がないどころか有害になる可能性もあるため、インターポールなども警戒しているという。
闇サイトのワクチンの相場は、12月初めには250ドルほどだったが、現在では500~1000ドル(約5万2000円~10万4000円)まで上昇しているという(タイムズ・オブ・イスラエル)。製薬ロジスティクスの専門家は、世の中には自分や家族のために、アクセスできない医薬品でも手に入れたい人のための市場が存在しているとし、これが犯罪者の金儲けの種になっていると説明している(FT)。
◆自治体のワクチン横流しか? 個人情報を聞き出す詐欺まで
闇サイト以外でもワクチンに関する犯罪や詐欺は起きている。アメリカ、ニューヨーク州では自治体の医療関係者がワクチンを横流ししたとして捜査を受けている。同州では12月末に医療従事者が不正にワクチンを入手した場合の罰則を知事が発表しており、接種の順番が来ていない人にワクチンを提供した場合には刑事罰を科すという法案提出も検討中だ(USAトゥデイ紙)。
イギリスでは、国民保健サービス(NHS)を装ったメールや電話で、ワクチン接種登録のためと偽り市民に銀行やクレジットカードの口座情報を聞き出す詐欺が起きている。もともとワクチン接種は無料で、警察ではNHSが個人情報を聞き出すことは絶対にないと市民に呼びかけている(BBC)。
日本でのワクチン接種開始は2月末からとされているが、未承認の中国製ワクチンを国内の富裕層が接種しているという大手紙のニュースもあった。人々の不安に付け込む商売は必ず出て来るもので、詐欺や犯罪に巻き込まれないよう、くれぐれも注意したい。
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