コロナ回復後も倦怠感、関節痛……「ロングCOVID」研究が必要とされる理由
◆早急な研究が必要とされる理由
つまりサイエンス・フォーカスの定義による10%というのは、かなり少なく見積もった数字なのだ。それでも、全世界の感染者数が約7700万人を超えることを考えると、ロングCOVIDに悩まされる人の数は770万人を超えることになる。これは、当然軽視できる数値ではない。
長期的な影響を及ぼすウイルスは新型コロナだけではない。ネイチャー・メディシン誌も、エプスタイン・バーウイルスが引き起こす伝染性単核球症や、ウイルス感染後に発生する可能性があるギラン・バレー症候群などを挙げている。しかし、同誌が指摘するように、新型コロナウイルスに特徴的なのは、「感染者数の非常な多さ」と、影響を及ぼす範囲が「肺、肝臓、脳、腎臓、心臓などの複数の臓器系」と広いことだ。このような多面的な症候群はどのようにして引き起こされるのか? それを明らかにするため、ロングCOVID研究が緊急に必要とされている。
◆ロングCOVID専用医療体制の整備
ロングCOVIDにどう対処するかという難しさは、医療システムのあり方にも関わってくる。というのも、ロングCOVIDの患者は「多分野の専門家の関与を必要とする幅広い症状」(ネイチャー・メディシン誌)を持つ可能性があるため、医療側にも総合的なサポート体制が必要となるからだ。確かに、最も多いとされる3つの持続症状「倦怠感、嗅覚や味覚の消失、関節痛」(臨床感染疾病誌)を見ても、内科、耳鼻咽喉科、整形外科のいずれを受診すべきか、患者も迷うことだろう。
さらにロングCOVIDは目で見てわかる病理を持たない場合が多いという問題もある。上述のナイト医師によれば、ロングCOVIDに悩む患者のうち肺の瘢痕、心筋の損傷、神経学的損傷などの病理を持つ者は少数派で、多くはX線検査、CTスキャン、肺機能検査で、より正常な数値がでるのに、倦怠感、息切れ、関節痛、下痢などの症状をおもに訴えるという。この場合、何が症状の原因なのか医者にもわからないのが現状だ。肺や心臓にダメージを負っているのなら対処のしようもあろうが、そうではないからだ(サイエンス・フォーカス)。
とはいえ、ネイチャー・メディシン誌によれば、複数の専門分野にまたがるケアを提供するロングCOVID患者治療センターの開設は、最近増加の傾向にある。たとえば、アメリカでは、ニューヨーク市のマウントシナイ病院にあるポストCOVIDケアセンターや、ペンシルベニア大学医療システム内に置かれたポストCOVID診断・回復クリニックなどである。さらに、イギリスの国民保健サービスが11月15日、ロングCOVID対応クリニックを40ヶ所立ち上げると発表した。
少なく見積もっても、死亡者数よりはるかに多いと考えられるロングCOVIDの患者。さらなる研究調査に加え、長期にわたるリハビリプランを可能とする、より統合された医療センターの準備も早急に必要とされるのではなかろうか。
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