全頭殺処分命令で混乱、デンマークの「ミンクゲート」 予防のため殺される動物たち

Mads Claus Rasmussen / Ritzau Scanpix via AP

 フランスアンフォによれば、現在ミンクの殺処分は、感染が見つかっていない飼育場では義務ではなくなっている。また政府は、ミンク業者への補償金も30億ユーロ近く準備した。とはいえ、ミンク産業が世界的に見ても瀕死の状態であることに変わりはない。もともと動物愛護の観点からも問題視されてきた毛皮生産業は、すでに英国とオーストリアでは禁止されており、ドイツをはじめ、ベルギー、フランス、ノルウェーでも段階的に終わらせる計画を立てていた。また上述したように、オランダでは、新型コロナの影響で実質的な終焉を迎えるに至った。「ヨーロッパ全体には約4350のミンク農場があり、ポーランド、フィンランド、リトアニア、ギリシアも含まれる」(BBC、11/11)とされるが、今後の感染拡大いかんで、さらに減少する可能性もある。

◆懸念される環境への影響
 デンマークでは、すでに1000万頭以上のミンクが殺処分された。それらのミンクは地中に埋められたが、20minutes紙(11/25)によれば、腐敗ガスの圧力で地表に浮き上がる現象が起きており、SNS上で新たな騒動となっている。同紙によれば、湖から300メートルは離さねばならないのに、200メートルの距離に埋葬場所が置かれた例もあり、湖の汚染が心配されている。

 鳥インフル、豚コレラ、新型コロナで、「予防策」の一言で殺処分される飼育動物が非常に多い。動物由来の未知のウイルスとの出会いは、これからも尽きないであろうことを考えると、人は、野生との境界線をいま一度見直す必要があるのかもしれない。新型コロナ禍こそがその好機ではないだろうか。

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Text by 冠ゆき