トランプ政権が嫌がるファウチ所長とは? 国民は支持 「国宝」とも

Erin Scott / Pool via AP

◆科学を認めたくない、嫌がらせや批判相次ぐ
 ファウチ氏はいまでも政権のコロナウイルス・アドバイザーであり、大統領と国民にコロナの危険性を伝え続けている。しかし一部で、新型コロナウイルスはファウチ氏が作ったというデマがあり、同氏のもとにはヘイトメールのみならず、深刻な脅迫状なども届いているという。たとえ政権側の説明と違っても事実を伝えるというファウチ氏の静かな主張がトランプ支持者に疎まれ、極右や反科学陰謀論者の標的になった原因だとフランス24は述べている。

 ファウチ氏を支持しトランプ大統領を批判するUSAトゥデイ紙の社説に対しては、ピーター・ナバロ大統領補佐官が反論を寄稿した。1月に中国からのフライトを止めることに反対し、パンデミックの危険性を軽視し、マスクの着用についても意見が二転三転したなどと述べ、「国民の扱いはうまいが、私が関わったことでは彼はすべてにおいて間違っていた」と批判している。こういったファウチ氏の過去の発言を持ち出して貶めようとする動きに対し、USニューズ&ワールドレポート誌は、ウイルスの実態がよくわからなかったときの話だと擁護している。マスクに関しては、当時医療従事者に優先的に行きわたらせることを意識したもので、現在のファウチ氏は推奨派だ(アトランティック誌)。

「検査数が増えたから感染者数も増えただけ」「コロナはいずれ消える」という、楽観的な見通しを持つトランプ大統領や支持者の考えに迎合しないファウチ氏を政権側は快く思わない。アトランティック誌によれば、現在のアメリカの状況は深刻で、一部州で見られる感染拡大はリセットしなければならないとファウチ氏は見ている。皆がロックダウンに戻らなくても、マスクの着用、バーの閉鎖、集会の禁止、ソーシャルディスタンシング、弱者の保護といったルールを徹底することで状況は改善するという主張だ。

◆医療関係者が立ち上がる 信頼は大統領よりも上
 ファウチ氏に対するホワイトハウスの攻撃を受け、全米の公衆衛生専門家3500人がトランプ大統領に公開書簡を送り、ファウチ氏のような尊敬される専門家を主流から外す行為はいまのような感染状況では危険だと主張している。非営利団体「Center for Science in the Public Interest」によれば、ホワイトハウスはナバロ氏の論説から距離を置いているが、4月以来初となった7月21日のホワイトハウスのコロナ会見には、ファウチ氏は招待されなかった。

 クイニピアック大学が行った7月15日の世論調査では、回答者の3分の2がファウチ氏のコロナに関する情報を信頼するとし、3分の2がトランプ氏の情報を信頼しないと答えた。同大学の調査アナリスト、ティム・マロニー氏は、ファウチ氏はホワイトハウスの蚊帳の外に置かれてしまったのかもしれないが、有権者は戻ってきてほしいと考えていることは数字から明白だと述べている。

 ファウチ氏は自分を陥れようとする一部の動きは「奇妙」で、結局は大統領の評価を落とすことになると述べるが、そんなことよりも感染を食い止めるほうがずっと大切だとし、自身の仕事をまっとうする意志を示した(アトランティック誌)。

Text by 山川 真智子

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