北朝鮮と新型コロナ 金正恩氏、国民に対策継続求める

AP Photo / Jon Chol Jin

 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は、党幹部に対し新型コロナウイルスに引き続き警戒するよう呼びかけた。国営通信が7月3日に伝えたところによると、自己満足に浸っていると「想像もできない、回復不能な危機」に陥るリスクがあると警告した。

 同国国営の朝鮮中央通信(KCNA)によると、金委員長は警告を出したものの、国内のウイルス感染者は1人もいないことを改めて確認した。世界では健康に対する危機が広がっているにもかかわらず、「悪性ウイルスの侵入を完全に阻止した」と前日の党会議で発言したとされる。

 脆弱な医療インフラに加え、昨年末に新型コロナウイルスが発生した中国との人的、物的な面での緊密な関係からすると、北朝鮮がウイルス被害を完全に免れたという見方に対しては、国外から疑いの目でみられている。

 ウイルス対策を「国家の存続をかけた事態」とみなしている北朝鮮は今年初め、ほぼすべての国境間の往来を封鎖したほか、観光旅行を禁止し、医療関係者を動員してウイルス感染と似た症状を持つ人を隔離させた。

 専門家らによると、同国の核兵器やミサイル計画に対するアメリカ主導の厳しい制裁措置ですでに疲弊している経済に、自発的な封鎖措置が追い打ちをかけている。

 KCNAの報道によれば、金委員長は党政治局会議中、近隣諸国でウイルスが拡散し続けており、「自己満足や制限緩和をすることなく最大限の警戒を続ける必要がある」と強調した。

 さらに同報道によると、金委員長は幹部の会議欠席や緊急のウイルス対策法規への違反を激しく非難し、「感染対策の性急な緩和により、想像もできない回復不能な危機を招く」と警告した。

 党機関紙の労働新聞には、会合での金委員長の写真が複数枚掲載された。国営機関がこうした写真を載せるのはここ数週間で初めてのことである。金委員長だけでなく、会議に参加していた幹部たちもマスクを着用していなかった。

 委員長の最近の発言からすると、かねてより経済制裁にあえいでいた北朝鮮の負担は大きいものの、最大の貿易相手国で経済的なつながりが深い中国との厳格な国境閉鎖は今後も続くだろう。

 中国側のデータによると、3月と4月の北朝鮮の対中輸出と輸入はともに2ヶ月連続で90%以上減少し、5月の対中貿易量は前月比164%増加した。IBK経済研究所のレポートには、北朝鮮が貿易を回復させようとする動きがあると報告されている。

 韓国統一部のチョ・ヘシル副報道官は3日の記者会見で、北朝鮮と中国との貿易が完全再開となるかどうか現時点では不明だと述べている。

 ウイルス感染拡大が広がる前でさえも、北朝鮮は核兵器開発計画に対する国連制裁によってもたらされた苦境にあえいでいた。2019年の対中貿易量は、石炭、繊維、海産物といった北朝鮮の主要輸出品目を対象とした国連の新たな制裁が数年前に採択されて以降、2016年比で半減以上の落ち込みとなった。

 金委員長は2018年と2019年、アメリカのトランプ大統領との3回の首脳会談を含む立て続けの外交を展開した際、制裁緩和を勝ち取ろうと躍起になっていた。

 しかし、一部非核化の見返りに広範な制裁緩和を求めた金委員長の提案をトランプ大統領が拒否した2019年2月のベトナムでの第2回首脳会議以降、この取り組みはほとんど進展していない。

 金委員長は昨年、野心的な「経済発展5ヶ年戦略」を発表したものの、コロナウイルスの危機発生により主要な経済目標の一部は達成できないだろうと専門家は述べている。昨年12月には、国民に対して経済的な自立に向かう難局に屈しないよう呼びかけつつ、制裁に対しては「正面突破」をはかると宣言した。

 韓国情報機関は5月、砂糖や調味料など輸入食品価格が高騰するなか、ピョンヤンで買い占め騒動が起きたと国会に報告した。その後、当局が買い占めを取り締まったという。

 ソウルにある北朝鮮の監視団体による最近の調査によると、ピョンヤン市内のコメおよび主要商品の価格、外国為替相場の動きは落ち着いているという。北朝鮮の医療問題を専門とし、ソウルを本拠とする民間研究機関「dprkhealth.org」のアン・キュンス所長は、公式の貿易統計には反映されない中国からの援助物資提供や非公式の二国間取引が行われている可能性があると述べている。

 世界保健機関(WHO)ピョンヤン事務所長のエドウィン・サルバドール氏によると、北朝鮮保健省が毎週WHOに報告している情報のなかで、6月19日時点で922人を対象に新型コロナウイルス検査を実施したところ、全員が陰性だったことが明らかにされた。

 サルバドール氏はAP通信への電子メールのなかで、北朝鮮はこれまでに2万5139人を隔離から開放し、255人ほどを隔離しているとWHOに報告したとしている。

「隔離されているのは港湾のほか、新義州(北朝鮮)・丹東(中国)の国境で働く労働者だ」としたうえで「北朝鮮に輸入された商品を処理した後に隔離された」と同氏は話している。

 また、北朝鮮のすべての国境は引き続きほぼ閉鎖されているが、中国の大連と北朝鮮の南浦港を結ぶ海路など複数の経路を使って商品が輸入されている。医療用品が優先的に取り扱われているという。

By HYUNG-JIN KIM and KIM TONG-HYUNG Associated Press
Translated by Conyac

Text by AP

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