マスク抵抗で逮捕者も アメリカ 政治的論争にまで発展

Ted S. Warren / AP Photo

◆マスク着用が政治的論争に
 アメリカでマスクを着用しない人々は「マスクがない」のではなく、政府からの命令に従わないことを誇示するためのパフォーマンスを行っているようである。感染症が流行するなか、自分が感染しない、あるいは自分が無症状保菌者の場合は他人を感染させないようマスクを着用することの何が難しいのか普通の人には理解しづらいが、このような行為の陰には理由があるという。

 CNNは、一部の人々がマスクを着用しない理由に関する医師の意見を伝え、マスク着用令が「自由権を侵害する」「自分を弱く見せる」「マスク着用ガイダンスがまぎらわしい」「着け心地が悪い」などの点を挙げている。どれも頷けないことはないが、マスク不着用で逮捕される人々は「自分のしたくないことを政府に命令されることで、自由がはく奪されている」と感じている印象が強い。

 トランプ大統領自身が感染拡大当初からマスク着用を頑なに拒んでおり、新型コロナウイルスの脅威を軽視する発言を繰り返してきた。そんな大統領の姿勢が支持者に強い影響を与えていることは間違いないだろう。6月20日にオクラホマ州タルサで開催された同大統領の選挙集会では、大統領をはじめマスクを着けている人はほとんど見られなかった。USAトゥデイによると、タルサで過去1週間記録的な感染者増加がみられており、同市保健局長はトランプ大統領の選挙集会など過去数週間に開催された大規模イベントが理由である可能性が高いと述べている。

 アメリカでは現在、マスクを着用するか・しないかの問題が医療ではなく政治的論争になってしまっている。アメリカでマスク着用を徹底するためには、まず大統領自身がマスク着用の必要性を理解し、率先して実行する必要がある。

Text by 川島 実佳