ギリシャ、厳格・迅速対策でコロナ封じ込め 汚名返上の大成功

Thanassis Stavrakis / AP Photo

 世界金融危機後、赤字隠しが発覚し財政危機に陥ったギリシャは、EUや国際通貨基金(IMF)から金融支援を受ける代わりに緊縮財政を強いられた。現在でも経済は不安定でEUのお荷物と揶揄されることもあるが、新型コロナウイルスの流行に際しては素早く対策を講じ、被害を最小限に抑えた。そして経済を支える観光業の再開に早くも舵を切っている。

◆まさかの健闘、コロナ対策大成功
 ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)によれば、欧州で新型コロナウイルス感染が広がると、多くのギリシャ人が次のイタリア、スペインになるという最悪のケースにおびえたという。ギリシャはEU内ではイタリアに次いで高齢化が深刻な国で、新型コロナで多くの高齢者が犠牲になると思われた。オンライン・ニュース『EUオブザーバー』によれば、緊縮財政で政府のヘルスケアの予算や病院への支出も大幅にカットされ、公衆衛生システムは、明らかに新型コロナを迎え撃てる状況にはなかった。

 ところが、ギリシャの新型コロナによる死者数と集中治療室に入る患者数は、欧州各国と比べ格段に少なかったとNYTは述べる。ジョンズ・ホプキンズ大学のデータでは、現在の感染者数は2882人、死亡数はわずか171人だ。米ABCによれば、ギリシャ当局の発表では、医療従事者からは一人の死亡者も出ていない。検査数が約7万件と少ないため、どの程度ウイルスが広がったかはわからず、また難民キャンプでの広がりに懸念が残るが、高齢者の多さを考慮すれば、死亡者数は驚くほど低い(NYT)。経済では苦しい道のりを歩んできたギリシャだが、新型コロナウイルス対応では大方の予想を裏切って、現在のところ優等生となっている。

Text by 山川 真智子