ダイヤモンド・プリンセス号が世界に教えた新型コロナの特性

Jae C. Hong / AP Photo

◆隔離は効果あり 感染は前から始まっていた
 しかし隔離の間も感染者の数は増加し、結局感染者712名、死者11名を出し、当時中国以外では最大の集団感染となった。海外メディアから注目され、批判的な報道が相次いだ。詳細な報道を続けたニューヨーク・タイムズ紙(NYT)は、乗客の下船後も、日本の初動の遅れと不注意で効果のない封じ込め対策によって、船が「水に浮かぶ疫学上の大惨事」になったと報じた。

 もっとも、現在では隔離措置への冷静な分析も出ている。イギリスの医学誌BMJに掲載されたジャーナリストのクリス・バラニュク氏の記事によれば、いくつかの論文は、ダイヤモンド・プリンセス号の船内隔離は有効だったと指摘している。その一つによれば、ほとんどの感染は隔離前から始まっており、隔離開始後の感染は、同じ部屋にいた乗客同士で起こったものだと考えられるという。ただ、乗客の隔離は有効だったが、乗客の世話をしていた乗員の間の感染は止めることができなかったとしている。この結論は、国立感染症研究所が公表した「現場からの概況:ダイアモンドプリンセス号におけるCOVID-19症例」の「暫定的な結論」とも一致している。

次のページ 貴重なデータ、科学者注目




Text by 山川 真智子