ダイヤモンド・プリンセス号が世界に教えた新型コロナの特性

Jae C. Hong / AP Photo

 新型コロナウイルスの集団感染が発生し、世界中から注目されたダイヤモンド・プリンセス号が5月16日、横浜港を出港した。船内隔離中に感染者が増え続け、日本政府の対応に批判が集まったが、船内という特殊な環境のなかでさまざまなデータや知見が得られていたとされる。

◆想定例なし、隔離は苦渋の決断
 乗客2666人、乗員1045人を乗せたダイヤモンド・プリンセス号(以下DP号)は、1月20日に横浜港を出てアジア数ヶ所を回り、2月4日に横浜港に戻る予定だった。ところが2月1日に香港で同船を下船した男性が新型コロナウイルスに感染していたことが判明。急遽3日に横浜港に戻り、日本政府の検疫を受けた。その結果、乗客乗員のうち10人の感染が判明したため、日本政府は乗客全員を自室で14日間隔離することを決定した。

 船内隔離は日本にとっては苦渋の決断だったという見方もある。日本政府としては、もしも3711人全員を下船させれば、当時感染者が20人程度だった国内での感染を広げる懸念があった。DP号を所有するカーニバル社は船内隔離反対だったが、武漢からの帰国者で手一杯の日本には、下船させ隔離するにもホテルも足りず、五輪選手村も完成前で使えなかった。日本政府は日本人の次に多かったアメリカ人乗客の帰国を米政府に求めたが、米疾病予防管理センターは、船内隔離がベストだと回答していた(ウェブ誌『WIRED』)。

 世界保健機関(WHO)が「感染疑いのある者から隔離し、乗客をできるだけ早く検査のために上陸させる」というクルーズ船での対応基準を出したのは、DP号の隔離開始から2週間半も経った後だった。それまで日本は、1500年代の感染症制御の方法を取らざるを得なかったとWIREDは述べている。

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Text by 山川 真智子